読書感想:貞操逆転世界の童貞辺境領主騎士2

 

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読書感想:貞操逆転世界の童貞辺境領主騎士1 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、我らが憤怒の騎士、誇るべき騎士であるチン〇イタイネン卿、ではなくファウスト卿であるが、彼の住まう国であるアンハルト王国の美意識においては彼は醜い部類である、というのは前巻を読まれた読者様であればご存じであろう。だが所が違えば美意識とて違うもの。隣国の蛮族、もといヴィレンドルフにおいては彼は「美しき野獣」と持て囃され、一種の神々しさのようなものをもって崇められている。こちらの国に生まれていれば、この作品はハーレムラブコメ一直線だったかもしれぬ。そんな事が分かるのが今巻である。

 

 

「ふざけんなよ王家」

 

前巻の争乱の後、久方ぶりに戻った領地。マルティナに稽古を付けながら愛馬である十歳の名馬、フリューゲルの嫁をどうしようかと迷う日々。そんな平穏も一瞬で終わる。アスターテからの使者を見、彼女にフリューゲルの嫁を探してもらおうとする中、王都から王命での召喚命令が届いたのである。

 

その命令とは、ヴィレンドルフとの和平交渉の使者という大役。弱き者達の話は聞かぬというかの国を相手にするのならば、彼にしかその役目は担えない。最低でも十年の和平を引き出す為、マルティナも連れヴァリエールを顔として。鎧を新調し準備を整え、ファウストたちは一路かの国へと向かう。

 

「女王カタリナの心を斬りなさい」

 

女王より受けた助言は、愛を知らぬ彼女の心を斬れ、という一見すると抽象的なもの。果たしてどうするべきか、手札も少ない中彼は一つの策を見出し、こっそりとあるものを拝借していた。

 

「あまりにも美しい」

 

そして辿り着いたかの国。かの国で待っていたのは圧倒的な歓待。国境線を踏み越えれば我慢できないとばかりに道中で百を数えるほどに一騎打ちを挑まれその全てに勝利し。辿り着いた王都、そのパレードで素顔を晒せば賛美の限りを尽くされ。ようやっと女王カタリナの元へ辿り着き、和平交渉に臨む。

 

さて、心を斬れとはどうするべきか。如何にすれば心を斬れるのか。

 

「少し、身の上話をしてもよろしいでしょうか?」

 

簡単な事だ。愛を知らぬと言うのなら、愛されていたと伝えればいい。愛に気付かなかった者同士、届かぬ愛の抱え方を伝えればいい。心を斬る、それは確かに為り。意外な条件と引き換えに、十年の和平を引き出すことに成功するのである。

 

さて、それでもアンハルト王国においてはファウストは醜いままであり、女王が激怒する程に、まだ彼を詰る者がいる。そして遥か彼方、次の脅威の気配は静かに近づいているのである。

 

心を斬る、という命題に立ち向かう中でより重厚な「誉」と「愛」に触れていく今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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