前巻感想はこちら↓
さて、今巻の題名では何故三回も大好きを連呼しているのか。その答えは今からこの記事で綴っていく事で明かしていきたい。
出会いと結びの春が終わり、季節は夏。やってきた夏休み。それは世々と海君の二人でいれる時間がたくさん増える魔法の休み。
が、しかし。この村に海はない。だが夏祭りがある。だから海君が世々を夏祭りへ誘うのはある意味当然の流れの帰結であったのかもしれない。
だけどうまく浴衣姿に化ける事が出来ず困ってしまった世々。彼女へと手を差し伸べたのは、唯一彼女の秘密を知る友人、灯理である。
一方、そんな頃。親友である由鷹にアドバイスを受けた海君もまた、夏祭りへ向けて用意を進める。
そしてついにやってきた夏祭り。二人で手を繋いで縁日を巡って、りんご飴で間接キスをしたり、海君がきつねに化けてみたりして、最後は秘密の場所ないつもの場所で花火を見て、二人でランタンを空に飛ばして。
そんな二人に、今巻ではちょっとした試練が訪れる。それは由鷹と灯理のちょっとした喧嘩と、少しの間の二人の別離。そして海がいつかいなくなる事が、世々に遂に明かされてしまう。
喧嘩した友人二人の間を海君と一緒に駆け回って、仲直りの為に尽力した世々の心は揺れる。それは知ってしまったから。三年の先、いつか海君は都会へ帰ってしまうという事。
「でも、海くんは、高校生になったら東京へ戻ってしまうんですよね。」
「みんな知ってるのに、どうしてわたしに言ってくれなかったんですか。」
溜まりに溜まった想いが弾けてしまって、思わず責めてしまって。自分だって、きつねである事を海君に隠しているのに。自分だって、言えていない事があるのに。
ずっと先のことだと思っていたから、みんな知っているから。だから言えなかった、海君の悔恨をきつねの姿で思わず聞いた世々。その胸に溢れる想い、その名は。
「おかえりなさい、海くん。それから、ごめんなさい。わたし、海くんが大好き。」
やっと言えたおかえりなさいと共に溢れた想い、それは大好きという只一つの思い。三度言っても尚足りぬ、例え離ればなれになっても、何度同じ出会いを繰り返す事になろうとも変わらないと信じられる只一つの思いだ。
「おまつりのねがいごと」、「もしもしトンネル」、「だいすき。」
不朽の名作である三冊の絵本に見守られ、ゆっくりと深くなっていく二人の恋の色。
前巻を楽しまれた読者様、やはり野村美月先生の作品が好きという読者様は是非二冊合わせてよんでみてほしい。
きっと貴方も、この恋の続きが読みたくなるはずである。