前巻感想はこちら↓
読書感想:魔女と猟犬3 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻よりおよそ一年の間を開け刊行される今作品、前巻までのストーリーは上記の記事を参考していただくとして。前巻までは三つ巴のお話を描いた今作品、今巻では何を描いていくのか、という訳であるが。今巻はがらりと色を変え、ミステリー風味に。四年前、エイドルホルンという村で捕縛され火刑に処され。そして今、復活したと噂される「お菓子の魔女」(表紙)を巡るお話なのである。
確かに死んだ筈の魔女が復活するなんてことはあるのか。その答えは、ミステリであるのなら今は語れぬ。しかし、これだけは言える。今巻で判明するのは、この世界、より救いようがないと言う事である。
「ないね。あり得ない」
確かに火刑に処された筈の魔女、フランツィスカの復活の噂。それを調査するために異端審問官のカルル、ザミオ、アビゲイル。そして見習い尋問官のエイミーと、記録役である宮廷詩人のリオが派遣される事となり。一行は独特の田舎らしさに溢れ、飢饉から立ち直った村を訪ねる。
あり得ぬ筈の事態、それを調査するのは急がねばならぬ。何故ならキャンパスフェローの猟犬と鏡の魔女、それの目撃情報もあるから。異端審問官の三人組が焦りを見せる中、記録役のリオは自由に歩き回り。そちらについていく事となったエイミーは、二人で独自に事件の謎に迫っていく。
粉挽き屋の主人の再婚相手の連れ子であったフランツィスカ。その足取りを探る中、捜査線上に浮かぶのは行方不明となった、彼女を気に欠けていた神父の話。墓の下に眠るのは、驚くべきもの。その事実が指し示していくのは、魔女は生き返った訳ではない、という事。
ではそれはどういう事なのか。そもそもロロ達は何処にいるのか。
「そんな想いに囚われているから、気付かない」
その答えは簡単。彼等は最初からそこにいたのだ。そして神の側につく者達が、その考え方が、想いがあるから分からなかった真実は暴かれる。復活したのか、それは否。ではどういうことなのか。そこには、こんな残酷な世界でも誰かを想う「愛」が、己を犠牲にしてでも守り抜く「愛」があったのであった、という事を。
騙し、先んじる事に成功した事でお菓子の魔女はロロ達の仲間に加わり。西にある花の国へと次の矛先が向かう中。海賊達もその国へと向かい、教会の者達もそれぞれの思いを込めそこへと向かっていく。
串刺しにするような、お菓子のような突き刺して来て甘い「愛」のある今巻。シリーズファンの皆様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。