読書感想:呪剣の姫のオーバーキル: ~とっくにライフは零なのに~

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方はオーバーキルという殺害方法はお好きであろうか。敵を跡形もなく立ち上がれなくなるほどにぐちゃぐちゃにして殲滅する、そんな圧倒的な勝利とも言える殺し方はお好きであろうか。

 

辺境に六禍と呼ばれる六体の強力な魔獣が巣食う、ファンタジー異世界のとある国。その国の王に献上する武器を打つべく、王都へと向かう道中に合った、かつて栄えた鍛冶師の家の少年、テア。

 

しかし彼は王都への道中、乗り合わせていた馬車は辺境の地でオークの群れに襲われてしまう。そこで繰り広げられるのは見るも無残な蹂躙劇。しかしそこへ救いの手が現れる。その救いの手こそ本作のヒロイン、六禍の一体を討伐した呪属性の武器を軽々と振り回すハンター、シェイ(表紙)である。

 

オークが巻き起こす、馬も人も種族なんて関係ないと言わんばかりの蹂躙劇。しかし、シェイが巻き起こすオーバーキルにも程がある蹂躙劇もすさまじいのである。

 

死にかけたオークの腕も飛ばし足も飛ばし。挙句の果てに頭をぶち抜き串刺しにし。

 

そんな彼女に見初められ、辺境伯と取引を交わし。テアは図らずも、自らの打ちたい武器とは真逆の武器を作らされる、シェイのパートナーとして狩りの現場へと引きずり出される。

 

そこで経験していくのは、自分が見た事もない現場。そして自分の打った武器が確かに誰かの役に立つという実感。

 

シェイのパートナーである以上、求められるのは完成度ではなく早さ、頑丈さ。そして安定性。求められたものを即座に創らなければならない非情な現場。

 

人を餌とし雌へのアピールの為死体を木に吊るすワイバーンとの戦いで、先祖の行いを否定する独創性を強いられ。

 

地を走る蜘蛛たちとの戦いで、自分達に無理矢理同道してきたエルフの射手、エレミアの分まで合わせて二人分の鍛冶を任され。

 

だけどそんな日々が何処か楽しくて。そして自分の作った武器が魔物達を快刀乱麻が如き勢いで蹂躙していくのを見るのは一種快感で。

 

工房にこもっているだけでは決してできなかった成長は、六禍の一体、大骸竜が巻き起こす災害の中で一つの結実を迎える。

 

「僕はシェイのパートナーだろ」

 

「いい顔をするようになった。任せるぞ」

 

力強く言った彼に、シェイは信頼と共に自らの得物を託し。

 

「こんなものを作られたら褒めるしかないだろう。さすが、私のパートナーだ」

 

その成果の結実に、笑みという礼を以て答える。

 

この作品は快刀乱麻、そして徐々に苦しめ磨り潰していくというスプラッタでオーバーキル溢れるファンタジーである。そして、野性的で刺激的な日々の中、未熟な少年が成長していく作品であり、汚れる事を厭わぬ一本筋の通った奴等が暴れ回る、独特の元気の良さがある作品なのである。

 

血生臭い作品が大丈夫な読者様、独特の軽妙な語り口で語られる、読み応えのあるファンタジーが好きな読者様にはお勧めしたい。きっと満足できるはずである。

 

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追伸・・・ゾンビを狩るなら・・・やはりあの武器である、さて画面の前の読者の皆様はその武器は想像はつかれるであろうか?