読書感想:呪剣の姫のオーバーキル ~とっくにライフは零なのに~3

f:id:yuukimasiro:20210816220923j:plain

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:呪剣の姫のオーバーキル ~とっくにライフは零なのに~2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、オーバーキルに過ぎスプラッタに過ぎるこの作品、ここまで読まれてきた皆様は何かお忘れではないだろうか。立ち向かうべき敵の事をお忘れではないだろうか。その名はメッソル。 シェイの祖父であり、六禍の一つとなり果てた存在である。

 

 

前巻、一瞬の交錯。メッソルの行方を探すシェイ達の元へ辺境伯が連れてきたのは、教会直属の組織、駆除騎士団の団長であるラザルス。多数の部下を従え、神の名の元に魔獣達を叩き殺す、外域で戦うエキスパート達のボス。

 

 彼は告げる。変異種と呼ばれる魔獣の調査をしている中、メッソルもまた既に捜査線上へ上がっていたのだと。彼を追う為に一時的に組む事になったシェイ達。しかし、そう簡単に連携がうまくいくはずもなかった。

 

当然の事であるのかもしれない。そもそも考え方もスタンスも何もかもが違う上に、日々相手にしている魔獣のレベルも違う。更にはラザルスとシェイが、そもそも噛み合わぬ。

 

 喧々諤々、日々溝を深めながらも進む外域探索。彼等の道の先に立ち塞がるのは、冒涜的な外見を持つ奇怪な魔獣達。その果て、騎士団を半壊させた、シェイの知己の相手を変化させた魔獣の討伐の果て、再び彼等とメッソルは相まみえる。

 

「いいか? 呪具の本分は命の簒奪だ。素材を切り貼りするだけの他の属性付与とはわけが違う。見誤るな」

 

テアを真っ直ぐに見つめ、まるで師のように語る。呪具の本分を忘れるなと。

 

ミスリルに挑め! 力を飼いならせ。青年、キミならできるだろう?」

 

更には、まるで友のように語る。楽な方向に逃げるな、それでは力は引き出せないと。

 

 伝説の英雄達が変貌させられた変異種たちを従え、脅威として認識されていないからこそ助言を与えられ。だがその助言に着想を得て、テアは新たな鍛冶へと挑んでいく。

 

辺境伯の力によりギルドの特別顧問となり、反対する幹部達を討伐対決の結果で黙らせ。伝説的な技法の写本と、メッソルの武器の破片から新たな技法を見出し。ギルドの技術顧問、ホフマンと仲良くなりながら「屍喰らい」の新しい深淵へと挑んでいこうとするテア。

 

 だが、その行く手を素材の問題が阻む。市場で出回っている最高級の素材を使ったとしても、「贄」の器として成り立たぬ。ならば何が必要か。それは最高級の先、正しく禁忌の素材。

 

その持ち主の名はナアス。六禍の一体であり、外域の一つ、黒死の谷に住まう虫の王。数え切れぬ程の部下を従え、毒と物量で確実に獲物を追い込む個にして無数。最弱にして最強なる者。

 

ナアスの討伐を目論む騎士団と臨む共同作戦。初めからして躓き、虫達の予想外の動きに分断され追い込まれる合同部隊。

 

 しかし、その中でもシェイは決して折れない。折れず曲がらず、今度は自分の為ではなくその素材を望んだテアの為に刃を振るう。

 

「テア。まったくお前ってヤツは! ・・・・・・最高のパートナーだ」

 

 なれば彼のやるべきことは只一つ。シェイが十全にその力を振るえる武器を創り出す事のみである。

 

巨大な魔獣や虫型の魔獣による蹂躙に更なる血塗れ、血みどろの殺戮現場が作り出され。だがそんな中、人々の思いと熱さは木霊する。

 

更に血みどろ、過激、その中で激突の予感高まる今巻。

 

前巻を楽しまれた読者様、シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

呪剣の姫のオーバーキル: ~とっくにライフは零なのに~ (3) (ガガガ文庫 か 5-33) | 川岸 殴魚, so品 |本 | 通販 | Amazon