読書感想:双翼無双の飛竜騎士

 

 空を駆けた キミが笑った それだけ だから高く 遠くへ飛べる。 これはとある有名ゲームの主題歌の一節である。何故こんな前書きになっているのかと言うと、かのゲームにおいては主人公とヒロインが一種、相棒関係(主観)になっているからこそただ恋人同士ではない、という面白さがあると思う次第だからである。そう、「相棒」関係である。一方的に支えるのではなく互いに支え合う。そんな関係もまた、乙なものではないだろうか。

 

 

隣国であるバゼルニア帝国の脅威に悩むトライバルト王国。かの国の辺境で帝国軍の襲撃を受けた村、瀕死となっていた所を一人の英雄に救われた少年、フェリド(表紙右上)。英雄の縁者であった飛竜騎士学校の校長、フローリアの元に預けられ十年ほど。優秀な成績を納めながらも彼は、騎士になる夢を諦めようとしていた。

 

 それは何故か。何故ならば相棒である竜のランクこそが優劣を決めるこの学校で、フェリドの相棒は最弱とも呼ばれる地竜、グラド(フェリドの下)であったから。更には彼は貴族の子弟が多く通うこの学校で少数派の平民の子であったから。「もぐら」と呼ばれ蔑まれ同級生には虐げられ。それでも懸命に生きる中、彼は厩舎の掃除中にウィンディ(表紙中央)と名乗る少女とその相棒である天竜、ピスティ(表紙中央下)と出会う。彼女もまた落ちこぼれ。それでも相棒を守りたいと言うひたむきな思いに感化され。ウィンディの叔父であるドルイドに向かって啖呵を切ってみせたことから彼女を指導することになり。彼女との日々が幕を開けるのである。

 

腕も相棒も未熟、常識も知らぬ世間知らず。そんな彼女に自分の独学で身に着けてきた技術を指導し、ウィンディもまた必死でその授業に食らいつき。ふとした因縁から、学校最強の炎竜騎士、カレンとその弟でありフィルドを虐げるドランの姉弟と決闘をする事となり。結果は見えていた、と宣う周りの目を覆し。奇策と技術で、勝利をもぎ取って見せる。

 

その勝利は周りの評価を覆し様々な影響を巻き起こし。やにわにフェリドが注目されていく中、ウィンディの中に芽生える言葉にならぬ思い。その思いはカレンによって形を与えられ、フェリドの実家帰省へついていく中で、どんどんと膨らんでいく。

 

「今度は私が、フェリドの力になりたい」

 

力になりたいと思う、彼の翼になりたい。その告白に水を差すかのように帝国軍の二面同時作戦が巻き起こり。迎撃に出たカレンは窮地に晒される。

 

「この戦い、絶対に勝つぞ」

 

放っておくわけにはいかぬ、絆によりて助けたい。飛び出していくウィンディとフェリド。敵となるのは、最強でもある意外な人物。

 

勝敗を分かつのは何か。フェリドに宿る禁忌の力か。

 

「俺を連れていってくれ、ウィンディ」

 

「うん、いいよ。私はフェリドの翼だから」

 

否。たとえ大きな力を持っていても一人では届かぬ。だが二人でなら。力を合わせれば、どこにだって届く。

 

「これからもずっと、傍にいてくれ」

 

「私も、大好きだよ」

 

 そしてその手は、更に世界へと伸ばされる。比翼連理の関係となり、結成するのは全く新しい騎士団。未来の伝説のコンビが今、誕生の咆哮を響かせたのである。

 

正しく爽快、快刀乱麻。その上で熱さもあり一本筋も通っていて。だからこそこの作品は面白いと太鼓判を押したい。

 

心燃やすファンタジーが読みたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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