読書感想:経営学による亡国魔族救済計画 社畜、ヘルモードの異世界でホワイト魔王となる

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方はもし会社を経営するのなら、どんな経営をしたいだろうか。利益の為なら、どこまで犠牲に出来るだろうか。

 

現代日本、その何処かにあるとあるブラック企業に一人の部長を務める男がいた。

 

 

彼の名は聖(表紙右から二番目)。組織に奉仕する事が大好きで、理想の組織を作る為なら何かを犠牲にする事も辞さない「魔王」と呼ばれた男である。

 

逆恨みを抱く通り魔により殺された彼は異世界へと前魔王の娘、シャムゼーラ(表紙手前)により召喚される。

 

しかし、その世界において魔族は四方から人間達により攻められあと半年もすれば滅亡するであろう存在であり、残る戦力は将軍格の七人の魔族とゴブリンやオーガを始めとする雑多な少数の魔物達、言わば風前の灯火、ヘルモードも良い所の状況であった。

 

だが、しかし。その状況を聞かされた聖の心はこれまでで一番燃え上がる。

 

それは何故か。何故ならこの世界には自分の上に立つ者もいなければ厄介なマスコミすらおらず、雇用に関する法律もない。言わば滅亡しかけの理想郷。最強の組織を作り上げられる下地がここにある。

 

「やりましょう。全身全霊でもって。救いましょう。この上ない悦びを胸に。あなたの召喚は誤りではなかったと、私自ら証明しましょう。働きましょう。組織に奉仕しましょう。個人は全体のためにあり、全体は個人のためにある。そんな美しい組織を作ってみせましょう」

 

我が世の春が来たと言わんばかりに哄笑を上げ、聖は早速動き出す。

 

「怠惰」の魔将、プリミラ(表紙右端)を妻とし、「憤怒」の魔将、フラム(表紙左上)を弟子として。

 

使い潰されるだけだった魔物達を管理し、鞭だけではなくやる気になる極上の飴を与え、戦術と装備を整え軍隊として整備し。

 

他国に対する政策は言わずもがな、戦後すら見据え文化発展に努めると共に裏側から工作を仕掛け国を端から切り崩す。

 

ただ、力で支配するのではなく。ただ、戦場の最前線で戦うのではなく。管理職として自らの意志で考え働く「部下」を鍛え上げ、「王」として適切に部下達を扱い戦場を掌の上で転がす。

 

正に魔王、正に管理職。そう言わんばかりに縦横無尽に活躍する。

 

この作品はそんな作品であり、魔王として部下達を率い経営者として魔族達を雇用し働かせるという、契約と雇用の関係から始まる、異端の魔王の活躍を描く作品である。

 

だからこそ面白い。現実にも通用する考え方が多数取り入れられているからこそ、内政ものとして一つの完成形となっている作品なのだ。

 

内政及び改革ものが好きな読者様、作戦で勝利を導く戦記が好きな読者様は心無い評価に迷わされる事無く是非。きっと満足できるはずである。

 

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