さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方の心の中には悪の心というものはあるであろうか。希望を胸に必死に立ち向かってくる敵達に希望を与えた後、これでもかとばかりに絶望を与えて蹂躙し呵呵大笑と言わんばかりに笑ってやるのは好きであろうか。
日本で死を迎えた青年、遥人(表紙奥)。彼は異世界の邪教の巫女によって転生し異世界へと転生する。
その世界は遥人が愛したSRPGの世界であり、現世ではまるでオーガのようと恐れられた彼が恐れられるどころか敬われる、まるで理想のような異世界であった。
彼が転生したのは邪道な側、悪役の皇帝の身体。皇帝のやるべき仕事は戦争であり、それに役立つスキルも転生の際に配布済み。
そんな彼を取り巻くは頼りになる三人の美少女な仲間。
遥人に一目ぼれしたダークエルフの族長、ゲオルギーネ(表紙右)。彼女の妹ではねっ返りのガブリエーレ(表紙左)。遥人の体の元々の持ち主、皇帝の妹のアリーセ(表紙中央)。
しかし遥人は気づいてしまった。自分の立ち位置、これは将来本来の主人公が属する解放軍に壊滅させられ討ち死にする立ち位置、だと。
生き残る為、和平を試みる遥人。しかしそれは本来のゲームでは起こりえない筈のイベント、ゲームの世界の歴史の大河を冒涜し流れを変えようとする行い。
だから歴史は歪みだし、本来発生せぬ筈のイベントが発生し未熟な敵に合わせて想定外の強敵が現れる。
だが、恐れる事はない。何故なら彼は今最強のスキルを保持する皇帝であり、周りを固めるのは彼を恐れるのではなく慕い、彼の力になろうと全力を尽くす頼れる部下達がいるから。
一人では無理でも頼れる部下達がいて。適切に指揮を取りその力を発揮できたのならば龍すらも恐れるに足らず。
「大事なのは、我が軍の兵に被害が少なかったということだけのはずだ」
そして皇帝に、人の上に立つ者として大切なのは戦術眼だけではなく、卓越した政治の手腕だけでもなく。臣下を思いやり力を引き出す王としての優しさ。悪役なだけでは決して持ち合わせぬ筈のその心が合わさる時、替え玉だった筈の遥人の英雄譚が始まるのである。
卓越したゲームの知識と、裏技すらも駆使して強敵と激突し、そして歯向かう者共へ粛清の刃を振り下ろす。
正義ではなく悪、王道ではなく邪道。しかしだからこそ、圧倒的な力が映え、まるで踏みつぶすかのような面白さがあるのも確かなのだ。
偶には悪になってみたい読者様、正義にはもう飽きたという読者様、少し違った面白さに触れてみたい読者様は是非。きっと満足できるはずである。