前巻感想はこちら↓
読書感想:魔王と勇者の戦いの裏で2 ~ゲーム世界に転生したけど友人の勇者が魔王討伐に旅立ったあとの国内お留守番(内政と防衛戦)が俺のお仕事です~ - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、この作品の主人公はヴェルナーであるが、ゲーム的にはマゼルが主人公である。故にW主人公のような体勢になっている訳であるが、画面の前の読者の皆様、こうは思われた事はないだろうか。ヴェルナーにとってのヒロイン、いなくね? と。マゼルにはラウラがいる、しかしヴェルナーにはいない。それも仕方のない事かもしれない。ゲーム中で彼は死んでしまうから。
だがこの作品においては、そんな方向に進まないために頑張るしかない。そんな彼の元にヒロインとの出会いが訪れる。それはマゼルの妹であるリリー(表紙左)である。
「前例のないものですから」
改革の旗振り役として励みつつも、やはり一朝一夕には成果は出るものではない。マゼルの家族が故郷の村で村八分にあっているという報告に首を傾げながらも内政に励むヴェルナー。だが、変わり始めたシナリオはいつでも彼の予想を飛び越えていく。突如宰相から下されたのは全軍出撃の緊急命令。大規模な中央都市が魔軍により陥落寸前という一報を受け、急ぎ出撃する事となる。
「トロイの木馬か!」
が、さらに事態は予想外の方向へと加速を始めた。伝令として飛んできたフェリから知らされるのは、大神殿のある都市にマゼルがいて既に戦闘に入っているという事。それは、ゲームのイベントが決定的に書き換わった合図。そして今回戦う魔軍の将は狡猾なタイプ。マゼルの家族の危機を予感したヴェルナーは全ての優先順位を変え。僅かな部下と共に急ぎ故郷の村へと駆けつける。
「これで一対一だぜ」
予想通り、魔軍の者達にリリーが囚われそうになっており、何とか助け出し。かと思えば国の威光が届かぬ小さな社会ゆえの、村の歪な思いを目にし。腐敗を目撃し溜息を尽き、リリー達を保護し一路戦線へ復帰する。
さて、皆様も何となくお察しであろう。ヴェルナーのこの行動、どう見ても命令違反であると。しかし今まで積み上げてきた信頼と成果がすぐの処断を避け。結果的に戦功を立てると言う条件の元にヴェルナーは戦線へ復帰する。
「本気でやるしかないよな」
ヴェルナーの策とマゼルの力が合わされば、勝てるものはそうそういない。その裏、戦火の中の不満は少し棘を残してはいるけれど。それでも生き抜くしかない。王都襲撃に備え、用意を進めるしかないのである。
ヒロイン登場で更に物語が動き出す今巻、シリーズファンの皆様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。