さて、画面の前の読者の皆様はアルカナ、という単語を聞いて何を連想されるであろうか。十体いる高レベルモンスター、あれはセフィロトに関係ある、というのは関係ないが遊戯王において存在するアルカナをモチーフとしたテーマをあげられる読者様はどれだけおられるであろうか。と、いうのはともかく。この作品においては「アルカナ」と呼ばれるスキルが重要である、というのはとりあえず先に把握しておいていただきたい。
人間と魔族が敵対している異世界、アディス。その中の国の一つであるルクス帝国に、クラスメイト達と共に召喚された少年、リュート(表紙右)。しかし他のクラスメイト達は天より与えられたスキルを持っていたけれど、彼だけは何も表示されず。当然のように、無能の烙印を押されて。魔族領へと追放と相なってしまったのである。
「生きる意味とか言うんだったら私があげるわ!」
頭の中に聞こえてくる謎の声、表示されるスキルらしき謎の文字。無我夢中で生き抜くも、限界状態がどんどん近づいてきて。その最中、魔物に追われていた少女、ルルノア(表紙左)を助けて。彼女に気に入られ命を助けられ。彼は魔王国へと渡る事となる。
快く迎え入れてくれた魔王、アルトが語るのは前提が覆る真実。そもそも魔族を敵視しているのは人間からの一方通行であり、そもそも魔王国は戦争を求めていない、という事。魔族が魔物を操っているという定説があるけれど、そもそも魔物は魔族とは何も関係ない第三勢力。そしてリュートのスキルが見えなくなったのは、根無し草の謎の老人、「隠者」の仕業であるらしいという事。
様々な事実を知り、更にはルルノアにより既に魔王国への雇用が決まっていると知らされ。帝国に戻る事も出来ぬので、魔王国に鞍替えし、ルルノアの執事として雇用が決まり。彼に倒され眷属になりに来た獣人、シュヴァテを従える事となり。同僚たちにも快く迎え入れられ、彼は魔王国で少しずつ受け入れられていく。
だが無論、反対勢力もいない訳ではない。近衛騎士団副団長のゼラが強固に反対し、騎士団の者達を相手に力を示しても納得してもらえず。そんな中、魔王国内の村で夜が明けず、竜が目撃された、という一報が舞い込み。ルルノアの指示で、ゼラと二人で調査に向かう事となる。
向かう先、目撃するのはゼラの秘密。
「それでいいじゃねえかよ。何も気にすることなんてない」
その秘密も受け入れ、友情を結び。激突する事となるのは、この世に三頭、偉大な二つ名付きで呼ばれる竜の一体。二人の力を合わせ、一矢報い。敵対していた意外な理由を聞き誤解を解いて。その竜から得たのは、アルカナの基礎的なお話とリュートに話しかけてきている謎の声の正体。
様々な事を知り、だがまだ何も始まっていない。これから全てが始まるのである。
真っ直ぐに王道、ど真ん中の面白さがあるこの作品。最近の王道路線が好きな読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
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