読書感想:吸血令嬢は魔刀を手に取る

 

 さて、時に画面の前の読者の皆様は少し昔のアニメであるが、「ソウル・イーター」というアニメをご存じであろうか。原作は少年ガンガンに連載されていた漫画であり、九十九の悪人の魂と一つの魔女の魂を集める為、大鎌に変身する少年と、使い手たる少女が共に戦うお話であったのだが。人間が変身する武器、という単語だけ聞いて画面の前の読者の皆様はどんなキャラを連想されるであろうか。

 

 

中々、思いつく所がない、という方もおられるかもしれない。実際私も上記のアニメか、「聖剣の刀鍛冶」シリーズくらいしか思いつかぬ。この作品はそんな、武器に変身する力を得た主人公と、ヒロインである少女が共に戦うお話なのである。

 

両手の指では数え切れぬ程の行方不明者が出ている連続失踪事件が起きているとある街。妹である湖昼がその事件に巻き込まれ行方不明となり、行方を探す少年、逸夜(表紙右)。よく分からぬ時期にやってきた転校生であり、何故か孤高を貫く少女、ノア(表紙左)を関係あるのではと疑い、尾行し。そうしたら何故か彼女が心臓を刺されて倒れており、更には鎧武者のような謎の敵が現れ、逸夜も死んでしまう。

 

「運ではありません。私はこの力を使って六花戦争で勝利します」

 

薄れゆく意識の中、ノアに何かをされ。次の瞬間に気が付けば、彼の意識は彼女が握る手の中、刀の中にあった。鎧武者を討伐し、彼女の拠点へと連れていかれ。その中で知ったのは衝撃の事実。

 

ノアはこの世界とは違う異世界、「夜ノ郷」に生きる「ナイトログ」という種族であり、この街ではその代表者六人が最後の1人になるまで殺し合う「六花戦争」が行われている。そしてナイトログは人間を、「夜煌刀」と呼ばれる武器へと生まれ変わらせる力を持ち、逸夜もそれによりモノへと変えられてしまったと言う事。

 

この戦争に巻き込まれ、湖昼は消えてしまったのではないか? 勝者が手にする願いを叶える力、「天外」に妹を取り戻すと言う願いをする為に。逸夜はノアに協力する事を決める。

 

「あんたが夜凪ノアのもとにいるのはよくない」

 

奇しくも逸夜の変ずる夜煌刀、「夜霧」は凄まじい力を持っており。その力でノアが勝ち抜いていく事で、彼女を疎んじていた父親からも注目されていく中、その力をわが物にしたいというノアのライバル、ミヤも粉をかけてきて。彼の所有権も巡り争いも発生しそうになる中。 一つの違和感、そこから様々な事実が明かされる。

 

湖昼という妹の真実、ノアの生まれの真実。そして、ノアの父親の狙い。

 

「そうです。逸夜くんが興味あるのは私だけですっ!」

 

 

明かされるのは衝撃の真実、しかしひざを折るにはまだ早い。絆を手に、主と刃として。夜明けを迎える為、その刃を振り下ろすのである。

 

心熱くなるバディアクションが目白押しなこの作品。熱いバトルが見たい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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