読書感想:ちいさな君と、こえを遠くに2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:ちいさな君と、こえを遠くに - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で空達は声優という夢に挑みだし、その夢の熱に心に灯をともされた奏太も、おいていかれないように、と進みだしたわけであるが。夢へ向かうのに立ち塞がるのは何であろうか。それは勿論、壁である。その形はそれぞれ異なる、けれど乗り越えなければ先はない。そして彼女達は、進み始めたのだから進むしかないのである。

 

 

 

「分かったよ。行っておいで」

 

前巻、皆で挑んだオーディション。その結果、エレナ製作のアニメに全員で出ることが叶うも、収録の為には一時的に東京に拠点を移す必要があって。結果的にエレナの祖母の家でお世話になる事になり、合宿のような一面も持った全員での東京旅行が幕を開ける。

 

「狙われてるのは命じゃなくて、心なの」

 

その始まりの前、美沙貴と紫苑は奏太に恋人になってもらおうとし、それを聞いた忍が彼の事を独占するために動き出して。空だけちょっと置いてきぼりな中、初めての東京へと全員でたどり着く。

 

合宿の始まりの前、皆で好きな所に観光に繰り出す事となって、美沙貴の希望で池袋の水族館を訪ねたり、忍のお願いで秋葉原の地下アイドルのライブを見たり。それぞれの楽しみに付き合っていよいよ始まる、収録の舞台。

 

その中で向き合うのは、それぞれの壁とそれぞれの音。かつての自分に寄せた奏太は、今の方が良いと言う一言を貰い、それに悩む間に紫苑にお願いされて、美沙貴と紫苑の彼氏に一日だけなる事となって。うんと二人を甘やかした途端に、心因性の原因で空の声が出なくなってしまう。

 

空の声を取り戻すために、懸命に奔走して。これが青春だと言わんばかりに、海に向かってあらゆる不満をぶつけてみたりする中、空もままならぬ思いを叫び、彼女の声は心の檻をぶっ壊して、やっと彼女の声は戻る。

 

「新たなバンドに相応しい”色”も、ちゃんと見つけた」

 

そんな彼女の色に、奏太は新たな音を見出していく。かつて掲げた朱ではなく、新しく掲げる光を見つけ出し、その元にかつての仲間達は集って、新たな形のバンドが幕を開ける。

 

「だから俺が引っ張るんじゃなくて、これからは一緒に歩んでいかないか?」

 

そして、少女達が夢の一歩を叶え、空が奏太の手を離れて。奏太もまた、新しい己の道へ歩き出す。何が出来るか分からない、それでもまずは挑戦してみたい。二足の草鞋への挑戦、新たな関係の始まり。先生ではなく、友達以上の仲間でライバル。引っ張っていくのではなく、共に歩いていく関係が始まるのだ。

 

前巻とセットで一つ、子供達の新たな夢が始まる今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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