読書感想:貞操逆転世界の童貞辺境領主騎士1

 

 さて、この作品の前に感想を書いた作品も貞操観念逆転もの、であったのだが特に因果関係はない。では前の作品はお気楽ファンタジーエロコメディといった感じであったが、この作品はどうなのか。先に言ってしまえば、この作品はただ、貞操が逆転している訳ではない。この作品は王道で骨太なファンタジーであり、「騎士道」と「誉れ」について焦点を当てた、言わば「漢」の物語なのである。

 

 

貞操観念が逆転したこの世界に於いて、女とは戦う者であり男とは家庭を守る者。かの世界の神聖グステン帝国の選帝侯の一人が納めるアンハルト王国。かの国の辺境の小村を所領する封建領主騎士、ファウスト(表紙左)。戦いに出れば縦横無尽、如何なる戦いにおいても成果を上げて帰還する。この世界に於いては珍しい男の騎士であり、「憤怒の騎士」と呼ばれ崇められ、隣国の蛮族からは「美しき野獣」と呼ばれ何よりも美しいものとしてあがめられる彼。

 

「失敗した」

 

 しかし彼は現代日本からの転生者であり、女性の薄着やセクハラに日々股間を痛め、貞操帯で二重に痛めていた。そんな彼はある日、自身が相談役を務める第二王女、ヴァリエール(表紙中央)の初陣として山賊退治に同道する事となる。だがそれは、予期せぬ惨劇と試練の始まりに他ならなかった。

 

猿並みの知能しかないのではないかと言わんばかりの、間抜けっぷりを見せる親衛隊たちに溜息をつきながらも退治に向かい。だが襲われた村で目撃したのは、報告の三倍以上の敵。何と近隣の千名ほどの民が住まう地方領主の町で家督争いが起き。敗れるも命は助かった領主の次女、カロリーヌが舞台を率い山賊たちを吸収し、蛮族の国へと逃走しようとしていたのである。

 

援軍は追いつかぬ、故に任務失敗は明白。だが、親衛隊隊長であるザビーネは悪魔的な弁論で村の女達をいきり立たせ。気が付けば四十もの死兵が誕生し、任務は継続される事となる。

 

逃走するカロリーヌ軍に追いつき始まる、一方的な殺戮。カロリーヌはファウストの剣の錆となり。ヴァリエールは初めての戦争、戦場で部下の死を経験し、初めての殺しを体験する。

 

「私の青い血の誉れとしては、もはや許せぬ!!」

 

だが波乱はまだ終わらなかった。後始末である裁判の場、囚われていたカロリーヌの娘、マルティナはファウストによる処刑を望み。ファウストは女王より斬首を命じられる。

 

だがそれは許せるものではない。許すことは出来ぬ、我が「誉」を否定はさせぬ。凛として豪と吼え、みっともなく逆らってでも。ファウストは己の義を、誉を貫いて見せる。

 

そんな彼はこの国においては醜い容姿である。だが、その心は愛され求められている。女王であるリーゼンロッテ(表紙右上)を始めとした数多くの女性達が、彼を狙っているのだ。

 

騎士道とは、誉とは何か。骨太で凄惨な戦場の中で泥臭くとも熱く輝く面白さのあるこの作品。王道なファンタジーが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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