読書感想:黒鳶の聖者5 ~追放された回復術士は、有り余る魔力で闇魔法を極める~

 

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読書感想:黒鳶の聖者 4 ~追放された回復術士は、有り余る魔力で闇魔法を極める~ - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻まで読まれている読者様であれば、ラセルが追放された原因であり勇者であるヴィンスを操るケイティこと「愛の女神」、キャスリーンの事についてはご存じであろう。何故か魔王に協力される様子を見せていた彼女。そも、何故女神の一人であるのに魔王と手を組んでいる様子を見せるのか。敵としての一端は見えたものの、まだ本質については見えはしない。だが何かは見え始めた。それが更に見えてくるのが今巻なのだ。

 

 

そも、何故ラセルは「聖者」なのか? 何故彼にその力が与えられたのか? その理由は太陽の女神ことシャーロット(表紙右)の胸の内。ならばそれを聞き出さねばならぬ。洗脳から救い出したヴィンスの仲間、マデリーンからの情報を受けラセル達は一路、王都であるセントゴダートを目指す。何故ならばそこに、シビラの姉であるプリシラがいる天界へ繋がる道があるし、シャーロットもそこにいるから。

 

ジャネットも加え更にドタバタした旅になったり。首尾よく王都に辿り着いても、運悪く幾つものダンジョンが同時に発生してしまったり。だが、そんな程度は恐れるには足らない。特にジャネットのパーティへの参加はラセル達に多大な恩恵を齎していた。多彩な大火力を使える彼女の加入により、点ではなく面での攻撃も出来るようになり。取れる戦術の幅が、大きく広がったのである。

 

「俺はもう、逃げも隠れもしない」

 

だからこそ、今回の軸というより見せ場はダンジョンではないと言えるかもしれない。本当の見せ場はラセルの覚悟。英雄を求めるか弱き少女の声、王都に巣食う他国と繋がる闇の思い。シャーロットとの対話を切っ掛けとし、選択を迫られたラセルは覚悟と共に選択を為す。闇魔法の使い手として逃げも隠れもしない。闇魔法を継ぐ者として、正体を隠さず表舞台に出るという事を。

 

「シャーロットと姉さんが求めた、人間の英雄。『黒鳶の聖者』、それがラセルよ」

 

それこそは英雄の覚醒。自分のミスで相棒たる女神を失ってしまったプリシラと、彼女の思いを汲み人間に希望を求めたシャーロットが望んだもの。女神の加護という殻を破る事が出来たもの、女神たちが望んだ英雄の姿なのである。それは「聖者」だから成れたもの。シャーロットにより見せられた可能性の世界では、決してたどり着けなかったものなのだ。

 

その彼へと明かされるのは、キャスリーンの真実。気付くのは今更気付いた彼女の行動の本質。彼等はまだ知らぬ、地上で一つの結果が芽生え、人間の生活のあり方が大きく変わっていく事を。

 

英雄となったのならばきっと、これから希望として求められるであろう事が予想できる今巻。さて、大きく動き出した物語は何処へ向かうのか。シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずで会え雨。

 

黒鳶の聖者 5 ~追放された回復術士は、有り余る魔力で闇魔法を極める~ (オーバーラップ文庫) | まさみティー, イコモチ |本 | 通販 | Amazon