読書感想:黒鳶の聖者3 ~追放された回復術士は、有り余る魔力で闇魔法を極める~

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前巻感想はこちら↓

読書感想:黒鳶の聖者2 ~追放された回復術士は、有り余る魔力で闇魔法を極める~ - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で幼馴染であるエミーを仲間に加え、もう一度関係を再始動させたこの作品の主人公であるラセル。前巻と一巻をセットで読まれた読者様、何かお気づきの事は無いであろうか? そう、ラセルは今、女神であるシビラを相棒とし、彼女を頭脳として行動している。ではそこに、ラセル自身の意思は果たしてあるのであろうか。という事である。

 

 

無論、シビラもラセルを尊重しているし、お互いが対等な相棒同士である。が、しかし。基本的にはシビラが頭脳であり、ラセルが実働である。そんな二人の関係に一石が投じられ、何かが変わり出すのが今巻である。

 

 前巻で再会した、育ての親であるフレデリカ。救援依頼へ向かうという彼女を手助けする為、共に向かったマデーラの街。だがしかし、シビラにとっても覚えのあるその街は今、活気を無くしたゴーストタウンと化していた。

 

その理由は、街に蔓延する謎の奇病、そして街の周辺に魔物が増加しつつある中、救援が来ないという現状。その理由の一端であるのは「赤い救済の会」。国全体を蝕みつつある邪教の思惑が、この街で既に中枢にまで食い込んでいたからである。

 

無論、放置するわけにもいかぬ。しかし、ラセルの力を軽々しく使えば「赤会」に利用されてしまう。故に内密に、役目を分け。ダンジョンを攻略したり新たな魔王と戦いを繰り広げながら。注意を逸らし、時に注意を惹きつけ。街の者達の手も借り、徐々に真実へと迫っていく。

 

その最中、触れるのは自身に差し向けられた暗殺者、アシュリーの思い。娘であるマイラを司祭という形で人質に取られ、それでもと願う母の思い。

 

その小さな命を糧に、顕現しようとする者が姿を現そうとする。その名は何か、それは「魔神」。魔王が平民であれば、魔神は王族。そうと断言されるほどに圧倒的な格上の相手を前に、シビラは撤退を提案する。

 

「お前の判断を信じていないからだ」

 

 だが、ラセルはその提案を蹴り、マイラを助け出す方向へと進むことを提案する。女神ではなく冒険者、相棒のシビラを信じるからこそ。彼女に並ぶ為、救いたいものを救う為。心底から聖者である彼の願いの元、圧倒的な格上への挑戦が始まる。

 

一部が顕現しただけでも、強くなったラセル達三人を圧倒する程の、絶対的な力の差がある相手。そんな敵を前に、勝負を決める鍵となるものは何か。

 

それは人の意思。ちっぽけだけどそれでも、助けたいと言う真っ直ぐな思い。

 

しかし、ラセルが救うべき者はまだ残っている。その一つとの再会は、すぐそばまで迫っている。

 

二人の関係が変わり出す事で、更なる面白さが始まっていく今巻。

 

シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

黒鳶の聖者 3 ~追放された回復術士は、有り余る魔力で闇魔法を極める~ (オーバーラップ文庫) | まさみティー, イコモチ |本 | 通販 | Amazon