読書感想:ひとつ屋根の下で暮らす完璧清楚委員長の秘密を知っているのは俺だけでいい。

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様は、時折テレビで放映されている心霊特番の番組をご覧になられた事はあられるであろうか。どう考えても作り物では、という写真や映像が登場する事もあるし、これは説明がつかない、という写真や映像が登場する事もある。そういう番組は、昔の方が面白かった、というと懐古厨になりかねぬので自重するが。兎にも角にも、幽霊が苦手、という人は一定数いるものである。

 

 

「幽霊の正体見たり枯れ尾花」とは言うが、実際の所、自分では理解が出来ぬものが怖い、という方も一定数いるのも確かであり。結論から言うと、幽霊は怖い物なのである。

 

 そんな存在を恐れるのが今作品のヒロインであるスヴェトラーナ(表紙)である。神職の家系である主人公、通称「たーくん」の疎遠となった幼馴染であり、外面は完璧、品行方正な委員長である。しかし彼女にはたーくんにしか知られていない弱点があった。それは夜、一人でトイレにいけぬ程、怖い時には思わず事件性を疑ってしまう程のガチめな悲鳴を轟かせる程のビビりという事である。

 

そんな彼女は「たーくん」の家に、彼女の両親の海外赴任により一年ほど居候することになり。彼女が昔と変わらぬビビりであると言う事を知った「たーくん」に、彼女はビビりを克服する手伝いを依頼する。

 

 まずは怪談の朗読から始め、動画視聴からVRゲーム、お化け屋敷まで。絶叫と悲鳴、時々粗相に彩られた騒がしい日々をちょっとしたラッキースケベと共に駆け抜けていく中。「たーくん」はスヴェトラーナ、愛称「チカ」の昔と変わらぬ一面を知っていく。疎遠になる前の印象が、今の彼女の姿と重なり始める。

 

「私は、変わってないよ」

 

「今も昔もずっと、私はたっくんのことが大好きだから」

 

昔と変わらぬ愛称で自分を呼んできて、変わらぬ思いを伝えてくる彼女。彼女は何故、ここまでするのか。何故苦手にもかかわらず、克服しようと頑張るのか。

 

 それは、かつて「たーくん」と交わした「約束」があるから。彼女の中に、変わらぬ彼への思いがあるから。彼の隣に並びたい、その思いが心の中に生きているから。

 

「治るまで、いつまでだって付き合ってやるさ」

 

思い出した約束、心の中に取り戻した思い。だからこそ、彼からもまた約束の為に。伝える思いは、これからも先を願う彼だからの言葉。

 

真っ直ぐに爽やか、そして甘酸っぱく。可愛らしく心擽るラブコメが繰り広げられるこの作品。心擽るラブコメが読みたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

ひとつ屋根の下で暮らす完璧清楚委員長の秘密を知っているのは俺だけでいい。 (電撃文庫) | 西塔 鼎, さとうぽて |本 | 通販 | Amazon