読書感想:不登校の幼馴染が学校に行く条件は、毎日俺とキスすることだった

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 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様に一つお聞きしてみたいことがある。昨今のラブコメにおいては一対一の甘々路線が主流派を占めていっていると言っても過言ではないかもしれぬが、画面の前の読者の皆様は恋敵に当てはめられる登場人物がいた方が、ラブコメは面白いと思われるタイプであろうか。もしそうであるのなら、恋敵はどんなタイプの人物像がいいと思われるであろうか。

 

 

基本的には真面目だが何処か抜けているところもある、けれどサッカーという青春には全力な少年、宏樹(表紙左)。彼には最近、気になる存在がいた。その対象の名は幸穂(表紙右)。中学生の時に告白したらフラれ、高校生の時間を過ごす中で疎遠となり。去年の末から何故か不登校となってしまった幼馴染の少女である。

 

「・・・・・・・・・・・・じゃ、じゃあ・・・・・・今日から私と・・・・・・毎日キスして」

 

 いつ来ても暖簾に腕押し、そんな中で思わずこぼれ出た何でもすると言う言葉。その言葉に、部屋から姿を見せた幸穂はこう返す。学校へ行く代わりに、毎日私とキスをして、と。

 

思惑を掴み切れず混乱の極致の中、唐突に唇は奪われ。約束の言葉通り、幸穂は再び学校に通うようになり。

 

しかし、毎日キスをするという約束のままに。時に幸穂の家で、お風呂場で。学校で、皆との昼休憩時に。時間を選ばずキスをせがんでくる彼女の本心を掴み切れぬまま、キスを受け入れる宏樹。

 

 そんな日々の中、ひょんな事から宏樹は幸穂の本当の心を知る事になる。何故彼女は、許嫁がいるからと告白を断ったのか、という事。その事の裏に、どんな心を隠していたのか、という事を。

 

幸穂の婚約者である、他校のお金持ちのお坊ちゃんである先輩、芥川。しかし綺麗な外面に隠された内面は醜悪な下種、その一言に尽きる。幸穂の実家と宏樹の将来を人質に取り、無理矢理に婚約を結び、その影に幸穂は怯えていたのである。

 

「ああ。俺はずっとユキと一緒にいたいから、絶対に助け出してみせる」

 

キス、その裏にあった幸穂からの好意と助けを求める叫び。それを受け取り立ち止まれる訳はない。怒りと悲しみ、そして決意を以て。

 

「あんなクソみたいな許嫁なんかに絶対ユキのこと渡さないから!」

 

 宏樹は全校生徒の目の前で愛を叫び、幸穂に再びの告白をする。その想いと、彼からのキス。それは幸穂が願い焦がれていたもの。 彼女が何よりも欲しかった、彼女の心の扉を開く鍵。

 

「パパやママも、大好きなヒロくんも、不幸になんか絶対させないから!」

 

 そして、その想いに背を押され。呪縛から自身を解き放ち、幸穂は毅然と芥川に決別を告げるのである。

 

 

人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて地獄に堕ちろ。その言葉が真っ直ぐに似あう下種な小悪党もいる、故にこの作品はシリアスみもある心にクル作品である。実際、私も心にキテいる。

 

だが、その中に面倒くさい思いと、真っ直ぐにお互いを想い合う二人の恋があるからこそ。この作品は面白いのである。

 

甘いだけのラブコメに飽きた読者の皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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