読書感想:SNSで超人気のコスプレイヤー、教室で見せる内気な素顔もかわいい

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 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様は京都芸大や金沢美大京都大学の卒業式の光景をご覧になられた事はあるであろうか。ご覧になった事が無いと言う読者の皆様は、是非調べてみてほしい。きっと思いっきりツボに入って笑えるか、変な笑いがこみ上げてくるかと言う感じになる筈なので。

 

 

という前置きはさておき、「コスプレ」というのは日本の誇る文化である。コスプレに命を賭ける者達は人生を謳歌しているというのは私も思う次第である。

 

 そんな世界に一人の少年が、カメコという形で飛び込んでいくのがこの作品であり。可愛いヒロインとぎこちなくも心近づけ、初々しいラブコメ未満なラブコメを繰り広げる作品なのである。

 

そこそこ人気の同人作家である姉の手伝いにより夏コミの会場を訪れた少年、亮介。アニメ関連の趣味もなく、平凡な彼はコスプレコーナーで、弾けるような笑顔とコスプレが輝く少女、SNSで超人気のコスプレイヤー、「サクラ」(表紙左)と出逢う。

 

 思わず笑顔に目を奪われ、しかし知るのは衝撃の事実。彼女の正体は級友である瑞穂(表紙右)。クラスでも一人でいる事の多い、内気で人見知りな女の子だったのである。

 

彼女の秘密を知り、写真を撮ってくれないかと依頼され。友達となり、写真を撮り。彼女の趣味に関わり、更には瑞穂の知り合いであるレイヤーとカメコ、杏菜と莉子と知り合い。姉からバイト代の前借と言う形で資金を入手し一眼レフを入手し。どんどんとカメコという形でコスプレの世界へとのめり込んでいく亮介。

 

 しかし、その様子を見て何故か曇るは瑞穂の顔。何か負担になっていないかと異様に心配し、けれど理由を明かしてくれず。どうにも気にかかり亮介が聞き込み調査をする中、かつて瑞穂が人見知りとなった過去の忌まわしい事件を知っていく。

 

「俺たちの関係って、そんなに薄っぺらいものじゃないだろ」

 

失うのが怖いと吐露する瑞穂に告げる、己の本心。中学時代の仲間達とは違うと言う悔しさから出た、仲間だからという思い。

 

 本音をぶつけ合い、もう一度仲直りして。中学時代とは違う真の友情で結ばれた二人が挑むは、聖地での写真撮影。

 

「これが私の撮りたかった、最高の写真ですっ!」

 

あの日とは違う、押し付けるのではなく話し合って。意見を出し合い、試行錯誤し。二人の思いが重なり生まれる、心に描いた最高の写真。

 

 

 コスプレと撮影と言う題材の中で、唯一無二の友情とそこに込められた温かさが心を打つこの作品。ハッキリ言ってしまおう、ここまで心を打たれた作品は私にとっては久しぶりであると。

 

だからこそこの作品は、多くの読者様に読んでみてほしい。

 

そして、作品から何かを受け取ってほしい次第である。

 

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