読書感想:幼馴染たちが人気アイドルになった1 ~甘々な彼女たちは俺に貢いでくれている~

 

 さて、働きたくないでござるという言葉があるように、働きたくない、という読者様もおられるだろう。実際、働かずにお金だけ得れて生活が出来れば、まぁ嬉しいかもしれない。私とて、日がなラノベだけ読んで暮らせれば、と思った事はある。しかし、日本には勤労の義務というものがあり、働かなければ生活に必要なお金を得る事も出来ない。それでも働かず、誰かからのお金に頼って生きている人は、俗にいう「ヒモ」と呼ばれる人種であろう。

 

 

無論言うまでもないが、褒められた生き方ではない、今の日本では。寧ろ軽蔑される事の方が多い。しかしこの作品の主人公、葛原和真は高校二年生でありながら、全力でそんな生き方を遂行しているのだ。

 

「あのさ、おれ、はたらきたくないんだ」

 

僅か七歳、小学校の遠足で疲れた顔の大人を見た事で掴んだ真理。 ませすぎてないか? そうツッコミたくともご容赦願いたい。とにかく和真は齢七歳にしてそんな真理に辿り着いた。しかし和真はまだ子供である。そして別に特別な家の出身、という訳でもなくごく一般家庭の生まれである。

 

「はい、これ! 今月分のお小遣いだよ!」

 

「本当に、和真にはアタシがいないと駄目なんだから」

 

 

 が、しかし。人生がガチャだとしたら、和真は最高レアリティの当たりを二つ手に入れていた。それは雪菜(表紙右)とアリサ(表紙左)という二人の幼馴染。和真の事が大好きで、彼の為に今や大人気アイドルグループの一員まで上り詰めた彼女達。そんな彼女達が今、和真を養っていたのである。

 

最早存在自体が悪徳と強欲を煮詰めたような存在、生きてるだけで怠惰と強欲の大罪は極めてそうな彼。無論、只養われるだけではなく。二人の属するアイドルグループの、ファンクラブ会員番号一番の最古参ファンであり、情報発信の為のサイトを運営していたりする。

 

が、和真は二人のことが好きなのか、と言われれば違うと彼は、即座に答える。彼が大好きなのは二人ではなく、二人が貢いでくれる金である。寧ろ貢いでくれるなら誰でもいい、というクズの極みなのだ。

 

 

その在り方が露呈すれば、無論周囲からの反発を買うのは当たり前であり。反発どころか軽蔑まで買い、転校生であり雪菜の大ファンでもあるお嬢様、麗華を始めとし彼を排斥しようと言う動きが起きる。

 

「お前、ほんとに『ダメンズ』が好きなのか?」

 

だが、それでどうにかなるようなら既にどうにでもなっている。真性のクズは、その立場を護るためなら、時には動く。 秘密のコスプレ写真でファンクラブの面々を買収し麗華を孤立させ、その在り方で彼女のメイドである姫乃まで魅了し。挙句の果てに、まるで扇動者のようなやり口で、麗華の乾坤一擲の策すら手玉に取って、己の望みを引き寄せようとする。

 

「監禁、しなきゃ」

 

「監禁、か。悪くないかもね」

 

 

けれど、彼にも一つだけ誤算があった。それは二人の幼馴染の思いの重さを見誤っていたと言う事。 繋ぎ止めようと、逆に彼と言う存在に寄生せんとでも言うかのように。二人の重すぎる愛が目覚めるのだ。

 

色々な意味で新感覚、様々な意味で笑えるかもしれぬ、ツボにはまれば面白い筈のこの作品。ツボにはまりそうな読者様は是非。

 

多分、貴方も満足できるはずである。

 

 

幼馴染たちが人気アイドルになった 1 ~甘々な彼女たちは俺に貢いでくれている~ (オーバーラップ文庫) | くろねこどらごん, ものと |本 | 通販 | Amazon