読書感想:義妹は浮気に含まれないよ、お兄ちゃん1

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 さて、最近のラブコメ界においては時々見かける「不純愛」という要素を前面に掲げたラブコメ。許されざる関係と言うのは何故そういうのか、と言うと例えば初恋の人の娘であったり、年の差が一回りほどもあったり。そういう社会的倫理に関わる要素の観点から見て「不純愛」、と呼ぶのではないだろうか。では、許される不純愛、というものは果たして本当に存在するのか。イチャイチャしていても許される関係、なんてものは本当にあるのだろうか。

 

 

と、言う話はさておき。その答えの一つとして、「兄妹」という関係を上げられる読者様はどれだけおられるだろうか。兄妹ならばどれだけイチャイチャしても、良いのかもしれない。

 

 ではもし、そんな関係が「義理」であったのならば。法的な観点から見て一応問題のない関係であったのならば。その不純愛はどんな色を持つのか。その答えがこの作品なのである。

 

高校一年生、クラスのカーストで言えば底辺な方。オタクで陰キャな少年、蒼。彼には一つ、誰にも言えぬ秘密があった。

 

 それは、義理の妹である愛歌(表紙右)と二人で一人、二人三脚のコスプレイヤー「マナマナ」であるという事。衣装製作から撮影までを一手に引き受け、愛歌という存在を輝かせる彼。そんな彼はある日、ひょんな事から現役の雑誌モデルであり学校のカーストトップ、栞の秘密の趣味を知り。彼女にコスプレ衣装を製作してほしいと依頼された事から、彼の物語は始まっていく。

 

衣装製作の現場を見せ、型紙の切り出しから始め二人で生地を選んだり。栞と二人三脚で衣装製作に励む中、栞は何処かぐいぐいと蒼へとアプローチしていく。その真意を測りかね、過去での繋がりと彼女の心の傷を知り。蒼はどうしようもなく、栞に惹かれていく。彼女の為に変わりたいと願っていく。

 

「変わることが私の救いだったの。だからあおくんも、変わろうよ・・・・・・」

 

変わることが救いであると背を押す栞。彼女の後押しで、蒼は変わる為の一歩を踏み出していく。

 

「変わらないでよ、お兄ちゃん・・・・・・。変わらないことが、私の救いなの・・・・・・」

 

  と、そこで終わっていればこの作品は運命的に惹かれ合う二人の「純愛」ラブコメであっただろう。しかし、この作品は「不純愛」である。そしてその風を起こす主、愛歌は面白くないと言うかのように。蒼が知らぬ間に秘めていた気持ちを抉り出し、彼の心に入り込もうと迫ってくるのだ。

 

彼女にとって変化とは「呪い」。だからこそ、変わらないで、と。そのままの貴方でいてほしいと。まるで自分に繋ぎ止めるかのように。彼に口づけをし、妖艶に、蠱惑的に迫りくる。

 

 どちらも大事、どちらも自分にとっては輝く星。だからこそ悩む、揺れ惑う。二人の間で拭えぬ不純愛に絡めとられ。甘美な地獄の監獄の扉の先へ、引き込まれていく。

 

正にこの不純愛、レベルが高い。故にこそ面白い。

 

不純愛ラブコメが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

義妹は浮気に含まれないよ、お兄ちゃん1 (ファンタジア文庫) | 三原みつき, 平つくね |本 | 通販 | Amazon