読書感想:機械音痴な幼馴染が我が家でリモート授業を受けているのは、ここだけの秘密。

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 さて、昨今の世の中においてはかの悪名高きコロナウイルスが流行しているのはもう共通認識であるとして、現在学生である読者様にとってはリモート授業と言うのは、もうなじみ深い授業形態となってしまっているのであろう。社会においても、リモートワークという形態が働き方の一つとして取り入れられている。つまり何を言いたいのか、と言うとであるが。リモートが題材となるこの作品は、正に今の世の中だからこそ生まれた作品と言えるのではないだろうか、という事である。

 

 

小学校も、中学校の時も仲が良かった。けれど何故か、ある日突然、距離をとられるようになってしまった。その心が知りたくて、手を伸ばそうとしても、勇気が出せずに引込めてしまって。

 

 そんな勇気の出せぬ少女の名は枝折(表紙)。人気者ではあるが、本当は人見知りの少女。距離をとってしまったのは重音という名の少年。枝折の幼馴染である平凡な少年であり、親の都合で一人暮らし中の少年である。

 

勇気の出せぬ変わらぬ日々、しかし助は突然に。二人の通う高校で二年生にだけ導入されたリモート授業。その状況と、機械音痴であるという自分の欠点が助けの好機となる。

 

「だから、頼れるのは、重音だけ・・・・・・」

 

「そもそも私達は幼馴染。一緒にいても、おかしくなんかない」

 

半ば強引に、彼の手を借りると言う名目で授業中だけという条件で、彼の部屋に居場所を作り。そこから始まる、二人の不器用な交流。

 

インターホンの鳴る音で感づかれそうになったり、時に一緒にゲームをしたり、時には一緒に映画を見たり。更に時には一緒に帰ったり。まるで離れていた時間を取り戻すかのように、不器用に、けれど勇気を出して枝折は頑張っていく。

 

そんな彼女の歩み寄りに心を揺らされながら、けれどそれでも重音は突き放そうとする。自分は、彼女の隣にいるのは相応しくないからと。

 

『しおりんがそうしてくれって一度でも頼んできたことがあるの?』

 

しかし、喧嘩して心がすれ違って。それがどうにも辛くて。そんな彼へとクラスのギャル、唯奈は言葉を突き付ける。本当にそれは枝折の為なのかと。

 

「あなたはもう、気付いているはずよ」

 

更には、教師である愛美も重音へと言葉を届ける。本当の自分の思いに向き合うべきだと。

 

そう、考えているなんて自分への言い訳。本当に向き合ってはいない、枝折の心を見てもいない。いつから間違えた、なんて最初から。

 

「だから、ここで、もう一度やり直させてほしい」

 

 そう、向き合ってしまえば簡単。己の心は決まっている。大切な宝物、交わしたあの約束が目を覚ます。だからこそ、始まりの場所でもう一度、始めから。

 

「・・・・・・私も、重音の隣にいたいよ」

 

それこそが、枝折の欲しかった言葉。それもまた必然。ずっと欲しかったもの、ずっと隣にいてほしかった彼が、やっと自分から手を伸ばしてくれたのだから。

 

 今の世の中だからこそ生まれ、その根底にあるのは王道ど真ん中の幼馴染ラブコメであるこの作品。今時の要素をエッセンスにしているからこそ、この作品は面白い。幼馴染ラブコメとして、一つの満点なのである。

 

今だからこそのラブコメ、王道のラブコメを読んでみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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