読書感想:剣と魔法の税金対策5

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前巻感想はこちら↓

読書感想:剣と魔法の税金対策4 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、シリーズファンの読者の皆様は今巻の表紙を見て何となく、こんな事を想われたのではないだろうか。・・・誰や貴方と。クゥに似ていると言えば似ているが、髪も目の色も違う。それにクゥには勿論翼は生えていないし、そもそも彼女はここまでスタイルが良い訳でもない。では一体彼女は誰なのか。その正体はこの感想の最後で明かすとするので、致命的なネタバレを避けたいという読者様は今すぐブラウザバックしてほしい所存である。

 

 

様々な騒動の末、やっとこさ本格的に始まった特区の開発。謎の人物との邂逅と言う夢を見た、という事も半ば忘れながら、本日もお仕事に励むクゥ。そんな彼女の元へ、ブルーの部下である貴族、竜族の長であるイタクから領内で発見されたミスリル鉱山の開発の為、政略結婚をしないかと言う誘いが来る。

 

色々な事を考えとりあえずはその誘いを断り。そんな彼女へ、今度はゼオスから人類の聖地である大神殿の調査依頼が齎される。

 

三百年分の記録を辿り、同僚の力も借りて掴んだ微かな痕跡、舞台の裏で暗躍し続けてきた税悪魔、ノーゼの尻尾。しかし大神殿を管轄下に収める認識を司る天使、カサスに問題はないと断言され。尻尾を掴む為に、竜族との交渉に向かったブルーとメイと別れ、ゼオスの精神体をお供に、商売の相談と言う名目の元に大神殿へとクゥは潜入していく。

 

 かの地で出会った、慈悲深き聖女と崇められる神官長、ポエル。彼女の慈悲に触れ、彼女の施しに触れ。しかし彼女を悪く言う謎の老僧も現れる中、何故かいつもの聡明さを鈍くさせ彼女への妄信を始めるクゥ。しかしゼオスに諭され、ポエルの歪みを見た事で。徐々に目が覚めてきたクゥは、隠されていた矛盾に気付いていく。

 

ゼオスが危惧していた脱税案件、それは架空取引。大神殿という神職を隠れ蓑にし、税制を悪用し独善的な救いをばら撒いていたポエル、その共犯者であったカサス。激突は必然、それぞれが天使と融合し激しくぶつかり合う二人。

 

しかし、そこは大神殿。言わば敵の根城。操られる狂信者達に追い込まれ、傷つけられるクゥ。

 

 だが、彼女は一人ではない。ゼオスだっている。そして勿論、ブルーやメイ、イタクと言った頼れる仲間達だっている。

 

ゼオスの仕込んだお呪いにより転移で駆けつけた彼等によりあっという間に戦局は覆され。追い込まれたポエルとカサスにゼオスは真実を突き付け諭す。

 

「あなたたちが救った人たちに、あなたたちは救われねばならなかった」

 

何てことはない、自助・共助・公助の輪廻をきちんと回せばよかった。それができなかった事、ただそれだけだったのだ。

 

 ここで済んでいればハッピーエンドであっただろう。だがしかし、舞台は風雲急を告げる。突然のノーゼの強襲によりクゥは心臓を奪われ。代わりに「邪神の心臓」を埋め込まれ。大魔王(表紙)として覚醒してしまうのである。

 

正に風雲急、緊急事態。予想だにしなかった悲劇は何を齎してしまうのか。

 

その先を、早めに読みたい次第である。