読書感想:暗殺者は黄昏に笑う3

 

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読書感想:暗殺者は黄昏に笑う2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、一年と二カ月ぶりとなる今作品は、今巻で一つの節目、一先ずの完結を迎える訳であり、今までで一番明るい表紙、ミルの顔が一番笑顔である訳であるが。では今巻では何が起きていくのだろうか。

 

 

それは今巻においても、最後まででも何も変わる事はない。ミルとの平穏な生活を脅かす脅威はことごとくを排除する、ただそれだけだ。屍の山をどれだけでも積み上げた先に、二人にとって必要な平穏を探すのだ。たとえその道がどれだけ、二人しかいない孤独であったとしても。

 

『嘘つき』

 

『アタシみたいに?』

 

その道を進むと言う事は、より追い込まれていくと言う事だ。ミルの秘密を守るために殺したニーネの幻聴がちらつく中。運ばれてきたエルフの死体を解剖し、判明したのはプリオン病に罹患していた、という事。何処から感染したのか、という疑問を抱きつつ、相変わらずニーネの遺体を掘り返してほしいと言うジェラドルを躱す中。今巻の事件は幕を開ける。

 

「神族」を信仰する神殿とは違い、様々な宗教の集合体である協会。その中でも「天使」を信奉する一派の一員である「修道女」、エレーナとの出会い。行き倒れていた彼女に絡まれ、仕方なくご飯をあげたら付きまとわれて。ご飯と引き換えに事件の調査を依頼したら、事件の裏に繋がりそうな情報を掴んできて。その裏にいた、かつての依頼人の一人であるケルブートとの再会を果たし。彼が起こしていた一つの信仰の形が、更なる事件を呼んでいく。

 

 

死者の声を聴ける「聖女」、エウラリアからの依頼。何故か既にチサトの名前も、事情も知っていた彼女からの依頼と言うのは、神殿の活動にまで影響を及ぼしている、狂える魔物達の討伐依頼。ミルを護る為、という名目でエレーナまでついてきて、事件の調査をする中で街での事件が繋がっていく中。チサトは魔物の襲撃を利用し、事故を装ってエウラリアを排除しようと模索する。

 

だがミルが巻き込まれかけた事で、殺す事が出来ず。結局のところ、エウラリアを助けてしまい、避けたかった共同墓地での死者との対話の時が訪れる。

 

しかし、その危機の場は、チサトが仕込んでもいない謎の爆発により、一気に混沌の場へと陥り。混乱の中、エウラリアの護衛達は次々と殺され、事態の裏で虎視眈々とミルを狙っていた真の悪が目を覚ます。

 

「理解、出来るかよ、そんなもん!」

 

その根底にあるのは狂信、更には妄信。その思い込みが魔法に作用し、理解を超えた事態を引き起こし。その力を持ち、自らの幸せのために行動しようとする狂信者と、チサトはぶつかり合っていく。

 

「いこう、チサト」

 

 

その戦いを乗り切った先、エウラリアから為された提案。その提案に乗るのか、乗らぬのか、それはまだ分からぬけれど、もうここにはいられない。 全ての痕跡を消し、二人はまた旅立つ。 この二人での優しい日々をこれからも続ける為に。

 

少しだけ変化した気持ちが、これからも続く日々を予感させてくれる今巻。最後まで是非楽しんでみてほしい。

 

暗殺者は黄昏に笑う 3 (オーバーラップ文庫) | メグリくくる, 岩崎美奈子 |本 | 通販 | Amazon