読書感想:エプロンの似合うギャルなんてズルい

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 さて、ギャルと言う人種がこの世の中に存在していると言うのは当然、周知の事実であると仮定して。最近、ギャルなヒロインとのラブコメ、という作品が増えてきている気がするのは私だけであろうか。と、いう問いかけへの答えは画面の前の読者の皆様の中にそれぞれ存在するであろう筈なので敢えて聞かぬ、とし。最近、ギャルはギャルでもホンモノのギャルではないヒロインが増えてきている気もするのは私だけであろうか。

 

 

それは一体、何故なのであろうか。私の心の中には仮定から来る回答が一つ存在している。しかし、それをあえて明かす事はしない。解釈が違う読者様もおられるかもしれないので。

 

 さて、ここまで約二百九十文字の前置きを費やしてきたわけであるが言いたいことは、そろそろ察していただけただろうか。つまりはそういう事である。この作品のヒロイン、あみる(表紙)は「ファッションギャル」に近いギャルなのである。

 

「・・・・・・あいつ、本当に変わったな」

 

中学入学を切っ掛けにギャルとなり、今は教室のひなたと日陰に分かれ。あみるの幼馴染である翔一は今日も孤高に勉学に励み、様々な知識的興味を満たすために様々な本を読み漁る日々。

 

 しかしある日、そんな日々は担任からの依頼で終わりを告げる。中間テストを前に成績が全教科一桁という成績最低級のあみるに勉強を教える事になり。勉強するために両親の出張により実質一人暮らしの翔一の家に上がり込み。生活能力皆無が故に惨状と化したその様を見、あみるの「オカン力」が目を覚ますのである。

 

我慢の限界を迎え、一気に掃除し翔一をお使いに出し食料を購入し食事を作り。あっという間に翔一の生活圏の侵略を始め、私室の掃除に始まり日々の食事の用意まで。正にちょっと口うるさいけど優しいオカンのように、世話を焼き始めるあみる。

 

そんな風に世話を焼かれ、まるであの日のように距離の近い日々を過ごす中。翔一の心の中、あみるがあの日の面影と重なっていく。意外と家庭的で包容力もある、彼女の良さが見えてくる。

 

「人間、そんなに変わったりしない」

 

あみるの親友であるメアに告げられた、あみるの根底は変わらぬという事実。カラ元気の裏に隠れた、あみるの抱える思い。

 

 それは、病弱な彼女の母親の余命と言う非情な真実。年頃の乙女が抱えるにはあまりにも重すぎる、すぐそばまで迫る最悪な事実。

 

「当然だ。俺は絶対に諦めない」

 

その事実を知り、心押し潰されそうになるあみるを見て。今まで自分で築いていた壁を越え、翔一は確かに一歩、彼女へと手を伸ばす。例え非科学的だとしても、信じると言う思いを告げる。

 

今まで理解しようともしなかったもの、その中にこそ大切なものがあると気付いたのだから。

 

共に学び成長し、響き合う。そんな温かな関係の中に今芽生えたばかりの恋の芽の甘さがあるこの作品、温かいラブコメが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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