前巻感想はこちら↓
読書感想:ネトゲの嫁が人気アイドルだった1 ~クール系の彼女は現実でも嫁のつもりでいる~ - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻でこの作品のヒロインである凛香と主人公である和斗は無事に恋人同士となった訳であるが、前巻を読まれた読者様であれば、凛香のヤンd、もとい愛の深さはもうご理解いただけているであろう。普通のヒロインの愛よりも数段重い、彼女の愛。だがしかし。そんな愛こそが和斗の為には必要であった、というのがよく分かるのが今巻である。
「ほんと、和斗くんは私が居ないとダメなんだから」
晴れて恋人同士となるも、かたやネトゲが趣味な普通の高校生、かたや今大人気の高校生アイドル。二人の時間が中々噛み合う事は無く、ネトゲで会う時間を作れるのみ。だが、会えなくて感情を爆発させた凛香が泊まりに来て、一緒の布団で寝たりとどきどきの日々を過ごす和斗。
親友である橘のホモセクシュアルなカミングアウトから始まるドタバタ、奈々が飼っている猫、シュトゥルムアングリフに和斗が懐かれ凛香が嫉妬したり、相も変わらず過ごす大切な人達との楽しい日々。
しかし、ここまで書いてきた中で画面の前の読者の皆様は、何か引っかかられる部分は無かっただろうか? ・・・答えは一つ、凛香のお泊りである。
何故、凛香は簡単に泊まれたのか? それは和斗の両親の姿が見えないから。
両親に挨拶するはずだった、しかし夜九時を回っても帰ってこなかった。その状況、そして生活感のない家と和斗に興味も無さそうな冷蔵庫の中身。全ての状況証拠を元に和斗を問い詰める凛香。彼女が触れたのは和斗の心の闇。今の母親は継母であり、家族に興味が無い放任主義の元で育てられ、孤独が最早当たり前となってしまった歪な闇。
「そもそも、別居してる今の状況がおかしいのよ」
その闇に触れ、凛香は彼を受け止め自分の家に夏休みの間泊まりに来て、と彼を誘う。今のままの方がおかしいからと。
唐突に始まる同棲生活。触れる家族の温かさと賑やかさ。それと比較し、自身の家庭の何と冷えている事か。自覚してしまった歪さは和斗の心を苛み、反応を返さぬ父親に怒りが湧き、思い出の場所との再会に心が揺れる。
「私のいる場所が、和斗の帰る場所よ」
そんなぐちゃぐちゃな心を凛香は受け止め、確かな愛を以て包み込み告げる。夫婦なんだから、お互いがお互いの居場所だと。だからいつでも、帰っておいでと。
正に愛、正に唯一無二。お互いがお互いを好きすぎる、けれどこの二人はそれで良い。
渇ききった大海の砂漠を飲み込むのならば、世界を沈めるほどの大水こそが相応しい。
愛という確かな絆が深まり、確かな甘さが更に醸成されていく。故に太鼓判を押したい。一対一のラブコメにおいてこの作品は最高峰だと。
前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
ネトゲの嫁が人気アイドルだった 2 ~クール系の彼女は現実でも嫁のつもりでいる~ (オーバーラップ文庫) | あボーン, 館田ダン |本 | 通販 | Amazon