読書感想:クラスのギャルが、なぜか俺の義妹と仲良くなった。 「今日もキミの家、行っていい?」

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 さて、オタクに優しいギャル、なんてものは何処にもいないのかもしれない。そんな存在は幻想であるのかもしれない。そもそも現実世界においてギャルとオタクは中々に交わらぬものであり、そもそもギャルと呼ばれる存在も、いない場合も往々にしてある。

 

 

一体何を言われているのだと思われる読者様、今までの前説はとりあえずあまり気にしないでいただきたい。とりとめもなく、思いつくままに語ってきただけなので。

 

 では一体、何を言いたいのかと言うと。この作品のヒロインである結愛(表紙)がギャルだからである。だがしかし彼女は唯のギャルのようにウザ絡みしてくるわけではなく。何処か独特な接し方と距離感で主人公である慎治に絡んでくるのである。

 

ではこの作品は、慎治と結愛の二人だけのラブコメなのだろうか。そう聞かれるとその答えは否。二人の間を繋ぐ、鎹となる存在がいる。その名前は紡希。慎治の元従妹、現義妹。母親を亡くし彼の家にやってきた年頃の少女である。

 

「そっか・・・・・・なんかあったら遠慮せずに言えよ」

 

一歩踏み込むことがあまりにも難しく、それは彼だけが原因ではない。成績優秀、而して友人無し。そして、彼もまた母親がおらず接し方が分からない。だからこそもどかしくも距離を詰める事が出来ず、側でただ見守る事しか出来ず。

 

「・・・・・・俺の気が散らないようにしてくれるならいいけど」

 

そんな日々の中、慎治は告白される結愛を目撃し。いい加減告白されるのも疲れてきた彼女と協定を結び、昼休み中に共に屋上を秘密の場所として過ごす事になる。

 

 それだけで終わっている筈だった、だがそれだけでは終われなかった。紡希がネット上の友人として結愛を家に連れてきた事で、二人の関係は学校だけではなく、プライベートまで拡大していく事となる。

 

自分も含めて三人家族と見立て、幸せそうに笑う紡希の顔に真実を話す事が出来ず、やむを得ず彼女の前でだけ恋人設定を貫く事になり。

 

学校でも秘密の時間を過ごし、家でも彼女と同衾したり、紡希も含めて三人でプールに行ったり、お風呂に入ったり。

 

 何処かくすぐったくてこそばゆい、ちょっと変わってはいるけれど確かに生まれていく家族のような絆。その中、慎治と結愛は向かい合い、誰も知らぬお互いの顔を知っていく。

 

知らなかった、彼女が意外と家庭的である事や、どこか寂し気な影を漂わせることを。

 

知らなかった、彼がどこか卑屈に見えて真っ直ぐである事。頼りなさげに見えて頼れる、格好いい男の子である事を。

 

「もうおめぇは、ちょっと前のおめぇとは違うからな」

 

そして結愛と触れ合い、一人きりでいた彼の心が変わっていく。守りたいと思うものが増えた、一緒にいてくれないと寂しいと思う人が増えた。それは成長の扉を開く鍵。開いたのならば後は進むだけ。

 

 そう、この作品は甘いだけではなく温かい。まるでホットココアのように心の芯を温めてくれる、アットホームと言う要素が絡まっているからこそ面白い、ただ甘いだけではないからこそ面白い作品なのである。

 

だからこそ、色眼鏡で見ずにより多くの人に読んでみてもらいたい。

 

アットホームなラブコメが好きな読者様、可愛いヒロインといちゃいちゃしたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

クラスのギャルが、なぜか俺の義妹と仲良くなった。 「今日もキミの家、行っていい?」 (ファンタジア文庫) | 佐波 彗, 小森 くづゆ |本 | 通販 | Amazon