さて、この作品の感想を書いていく前に、ラブコメと言うものにおいてよくヒロインとして据えられる人物像を少し、画面の前の読者の皆様に思い浮かべてみてもらいたい。その中に「クラス一」、もしくは「学年一」、または「学校一」と冠詞につくヒロインと言うのはどれほどおられるだろうか。そのようなヒロインとのラブコメというのは数多いかもしれない。その源流は「身分違い」という事になるのであろうか。
しかし、一番がいるのなら二番だっている。そして二番目に可愛い女の子がヒロインにはなり得ないと誰が決めた。つまりはそういう事である。
今まで転校続き、まともに友達も作れないどころかそもそも友達の作り方すら知らぬ。そんな平凡な少年、真樹。高校生活の始まった日、彼は二人の少女と出逢う。クラス一可愛いと誰もが認める少女、夕（表紙右）。彼女の親友であり「二番目に可愛い」と言われる少女、海（表紙左）。住む世界の違う、二人の世界は交わらぬ筈だった。
しかしある日、偶々とある店で出会った事で。海が女子としてはやや異端な趣味を持っていると言う事が判明し、更にはそれが真樹と被ると言う事が判明し。同好の士を得たと言わんばかりに、二人は仲良くなり友情を結ぶ。
「早く隣に座りなよー、一緒に漫画読むんだから」
「今だけは私のベッドなの。ほら、おいで？」
毎週金曜日の放課後、真樹の家で繰り広げられる二人きりの時間。一緒に映画を見たり、漫画を読んだり。趣味を共有する秘密の友情を育む中、誰にも見せない海の素顔を知っていく。
そんな二人の世界が、家を飛び出すのにはそう時間はかからず。しかし飛び出した事で知られていく事があり、周りの目から見れば、海と距離の近い真樹に嫉妬が集中するのも当然であり。友情を築いたことで真樹は初めての事態に巻き込まれていく。
海の過去も交わる中、改めて考える二人の距離。このまま一緒にいるのが正しいのか、考えて距離をとろうとして。
けれど、どうしてもそれができなかった。秘密の友情が明かされても、捨てる事は出来なかった。
「・・・・・・大好き、だから」
その理由は簡単。既に今までの日々の中、思いは新たな段階へと進んでいたから。捨てきれぬ所まできていたから。
「堂々と皆の前で胸張って言いたいから」
その思いを受け、思い悩みの末に真樹は答えを出す。宙ぶらりんなままに安定を目指す、ゆっくりと進むと言う彼ゆえの答えを。
正に等身大、リアル。そんな生の瑞々しさと甘酸っぱさがあるのがこの作品であり。故にこの作品は、いとをかし。等身大の青春の輝きがあるからこそ面白いのである。
現実路線の真っ直ぐなラブコメを読んでみたい読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
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