読書感想:統京作戦〈トウキョウフィクション〉 Mission://Rip_Van_Winkle

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方は洋画と呼ばれる映画はお好きであろうか。好きな貴方は、スパイ映画と言えばどのシリーズを真っ先に連想されるであろうか。そして、どんなところが魅力で見所であると思われるだろうか。

 

恐らく多くの読者様がこう考えられるのではないだろうか。ド派手なアクションが舞い踊る、派手な戦闘シーン。そして敵味方の思惑が入り乱れる騙し合いと探り合いが見所であると。

 

そんな要素が好きな読者の皆様はご安心してほしい。この作品にはその要素が全て、これでもかと盛り込まれている。しかしそれ故に、激しく思惑が入り乱れ敵味方それぞれが騙し合う。故にこそ、作者様も推奨されているが是非この作品は二回読んでみてほしい。此処が伏線だった、この時すでに「彼」も読者の皆様も騙されていた。その全てを分かっている状態で読むと、この作品のカタルシスは最高に面白いのだ。

 

かつて「東京」と呼ばれた都市があった。しかしかの都市は今、東西大国主導の新冷戦の影響で大きな壁で二つに別たれた後、国連の領地として分割支配され、名を「統京」と改めていた。

 

謎の石、「神雷石」により未曾有の大災害が起き一度崩壊し立て直されたかの都市では、全ての戦闘行動が申請さえすれば「映画の撮影」として許容される。そんな全てが嘘偽りに満ちた街で、過去と未来からやってきた二人は出会う。

 

片方の少女の名は澪(表紙右)。五百年の前からきたくノ一。

 

片方の青年の名は零(表紙左)。五百年の後から来た、世界が滅びる未来を変える為に戦う「改変者」。

 

 二人の共通の目的、それは神秘の宝具、「コスモギア」の一つである時を遡る腕時計、「永劫」の観測者となる少女を止め、「永劫」を狙う東西大国のスパイ達から守り抜く事。

 

彼女を中心として、敵味方は激しく入り乱れ激しく「映画の撮影」という名を借りた戦争が繰り広げられる。

 

 だがしかし、この作品は「嘘」に満ちている。舞台にこれでもかと巧妙に張り巡らされた嘘と伏線。それは登場人物というキャスト達も、読者の私達も纏めて騙しにかかる嘘という罠。

 

「―――それじゃあ始めるわよ。雨宮澪。コールは貴方がやりなさい」

 

「―――統京作戦、上映開始!」

 

だがしかし、その嘘を乗り越え潜り抜け、駆け抜けたその先。

 

全ての伏線と嘘が集約されるその時始まる、気付かぬ間に仕掛けられ始まっていた一世一代の御伽噺。

 

その熱さが駆け抜ける時、心が何処までも熱くなるのだ。考えるのではなく感じられるのだ、この作品の面白さが。

 

作り込まれた舞台が好きな読者様、熱く激しい戦いが好きな読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

統京作戦〈トウキョウフィクション〉 Mission://Rip_Van_Winkle (電撃文庫) | 渋谷 瑞也, PAN:D |本 | 通販 | Amazon