読書感想:シャインポスト ねえ知ってた?私を絶対アイドルにするための、ごく普通で当たり前な、とびっきりの魔法

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  さて、アイドルと言うものは諸人の目を惹きつける存在であり、多くの人々の夢と希望となり得る存在である。画面の前の読者の皆様の中にも推しのアイドルがいるという読者様もおられるのではないだろうか。だが、アイドルの世界というのは戦場である。多くの他者を蹴落とし、他社の輝きを踏み台とし、その先にこそ人気者の世界が広がっている。そう言ってしまうのは過言なのだろうか。

 

 

奇跡の裏側、そこには誰にも知られぬ努力と涙、等身大の心が眠っている。だがそれは目に見える奇跡の前にかき消され、誰の目に止まる事もなく消えていく。

 

「私は、アイドルが認められ、愛される世界を作りたい」

 

「シャインポスト!」

 

「これが、私のキッラキラの夢だよ!」

 

 そんな世界の現状を打開したい、世界中の人々にアイドルの輝きを届ける道標となりたい。そんな見果てぬ夢の元に結成されたユニット、「TiNgS」。だがしかし、彼女達の力は未だ目覚めの時が来ず、それどころか各々が壁にぶつかり。たった三十人の観客すらも集められぬ。そんな現状を打開すべく、芸能事務所の女社長である優希に招聘された青年が一人。彼の名前は直輝。かつて所属した芸能事務所を訳ありで退職した「他人の嘘が見える」という特殊能力を持つ青年である。

 

彼の目を通してみる、三人のメンバー。大黒柱の杏夏(表紙)、お調子者の理王、前向きな元気印の春。

 

彼の目を通し見た理王と春の本音は偽りばかり、けれど杏夏は違った。彼女だけは嘘偽りなく大きな夢を語っていた。「彼女」と同じように。

 

 その言葉を、その真実を信じたくなったのか。一先ずは臨時のマネージャーとして、間近に迫った解散の危機を乗り越えるべく、メンバーと向き合う直輝。そして彼に可能性を託し、彼の期待から来る試練へと立ち向かうメンバー達。今ここから始まるのは、崖っぷちからの逆転劇。

 

視点を変えろ、全てを掴む必要はない。魅せ方を変えろ、魅せる事が今すぐにでも出来る力がある。

 

君達には無理だと誰かが言った、鼻で笑われた。乗り越えるべきは高く、ぶつかった壁は大きく。

 

「何もない奴が、アイドルになれるわけがないだろ」

 

「どれだけ勝ち目がなくても、決して諦めずに夢を追う姿を見せるのがアイドルだよ」

 

 だが、それでも。それでも諦めきれぬ夢がある。抑え込もうとしても嫌だと、胸の中で燃え盛り叫ぶ炎がある。だからこそぶつかり合って、己の限界も蹴り破って踏み越えて。自縄自縛の鎖をぶち壊し、彼女達は舞台へ羽ばたく。諦めたくない夢、「希望」となる為に。

 

嗚呼、何と言う作品なのか。アイドルと言うものに真っ直ぐに向き合い、これでもかと抉りたて。そしてその上で、彼女達の秘める野心と夢への熱を真っ直ぐに描いている。

 

故に、正に極上。作り込まれ伏線のばら撒かれた世界の中で踊る故に、この作品はレベルの高い最高クラスの面白さがあるのである。

 

夢への情熱が好きな読者様、アイドルが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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