読書感想:彼女できたけど、幼馴染みヒロインと同居してます

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。幼馴染は負けフラグなんて言う俗説はご存じであろうか。幼馴染は負けフラグ、と言うけれど。負けたから普通に抱えていた想いをそこですっぱりと諦めきれる、そんな訳が果たしてあるのだろうか。そんなにすっぱりと諦めきれぬ事こそが、人間の性ではないのだろうか。

 

ではこの作品の感想を書いていく前に、まずはこの作品の表紙を見てみてもらいたい。正に同棲感あふれるといった感じの表紙であり、生活感が溢れている表紙である。

 

だがしかし、彼女と主人公は付き合っていない。そう聞いた貴方は驚かれるであろうか。

 

とある高校の修学旅行。修学旅行と言えばいつもとは舞台が違う非日常に溢れる舞台であり、数々のラブコメ作品で告白の場として選ばれてきた日。

 

そんな特別な日に、主人公である平凡な男子高校生、相生夏は無表情で無口な転校生、姫乃の告白に答え、恋人同士となる事となる。

 

普通であれば物語をいくつか重ねてきた先に、辿り着くべきハッピーエンドのこの場所。だが、その幸福に否を唱える者がいた。その正体は兎和(表紙)。夏の幼馴染であり、今現在同居状態にまで持ち込んでいたものの負けが決まってしまったヒロインである。

 

しかし彼女は、今この時になって自分の想いに気付いてしまった。その気持ちに嘘はつけない。この気持ちはもう止められない。

 

そこから始まるのは、姫乃という彼女がいるのに、兎和と家で同居生活を繰り広げると言う捻れ矛盾しているかのような新たな日常。大手を振っていちゃつけぬ何処かもどかしい日々。

 

「・・・・・・信じてるから」

 

姫乃に言われて心震わせ、クラスの皆に兎和と付き合っていたと誤解されていたことが判明し冷や汗をかき。

 

姫乃とのデートの予行演習に兎和と行ったかと思えば、何故か姫乃に兎和と辿ったデートコースをなぞるかのような行動をされ混乱したり。

 

そんなもどかしい日々の中、溢れ出すもの。それは兎和、そして姫乃の夏という一人の男子が好きという大切な想い。

 

「良かったね、なっちゃん。素敵な彼女ができて。うちはなっちゃんも姫しゃまも大好きやから。二人が結ばれてくれたらすっごい嬉しいよ」

 

別々に乗った観覧車、電波の向こうで溢れる涙も隠せず声だけで笑う兎和。

 

「本当に思ってること全部言っちゃったら。わたしすごく重いし、すごくわがままで、すごくめんどくさい女だよ? それでもいいの?」

 

二人きりのデート。お互いに謝り合って、話してほしいと口にして。溢れ出す、抑えきれぬ姫乃の好きという想い。

 

二人ともえらべればどれだけ楽か。だがそんな選択肢は、何処にもありはしないのだから。

 

切なくもどかしく、何処か痛くてだけど甘い。

 

こそばゆい複雑なラブコメが好きな読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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