読書感想:こんな可愛い許嫁がいるのに、他の子が好きなの?

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 さて、許嫁は負けフラグ、なんて俗説は何処かにあったかもしれないが、時は令和、ラブコメは幼馴染、テンプレは王道。そんな今の世においてはそんな俗説も、否定できてしまうかもしれない。実際このブログでも感想を書いた、角川スニーカー文庫のとある作品があるくらいなので。では、許嫁というのは如何なる強さを持っているものであろうか。それは、折れぬ程の思いの強さ、と言っても良いのではないだろうか。

 

 

ではこの作品は、一体どんな作品なのであろうか。その答えを端的に表すのであれば、「許嫁が多すぎる!」とでもサブタイトルをつければ表せるのかもしれない。その真意は、是非画面の前の読者の皆様の目で見てほしい。

 

 そんな許嫁の一人であり、この作品のメインヒロインとなるのがクリス(表紙)。異国の大富豪の娘である。

 

父子家庭で育ち、貧乏ラーメン屋の息子であるが故にバイト漬けの苦労性。そんな主人公、幸太の父親により十年前に勝手に決められていた許嫁。

 

 普通に考えれば逆玉の輿、真っ先に飛びつきたくなるかもしれぬ案件。しかし、幸太はあっさりと婚約破棄を告げる。それは何故か。その理由は彼は、好きな人と結婚したいと言う確固たる信念があったから。そして付き合いたての可愛い恋人がいるからである。

 

彼女の名は氷雨。幸太の通う高校の高嶺の花であり、何故か幸太の告白を受けてくれた彼女。彼女の事を大切にしたいからこそ、クリスと言う存在とは付き合えぬ。

 

だが、それで諦められるクリスではなかった。クリスもまた、幸太に恋をしているから。大富豪の娘ではなく、只一人の女の子として見てくれる。初めての存在であり、初恋の相手である幸太を渡したくはなかったから。

 

「―――婚約解消同盟? そんなの嘘に決まってるじゃない」

 

 だからこそ、幸太と利害が一致しているように見せかけ同盟を結び。その裏で彼女は暗躍を始めるのである。

 

彼の事を導くかのように、様々な助言をしたり時にデートをプロデュースしたり。真っ直ぐに氷雨と向き合い、女性と付き合う事の経験値を貯めていく幸太を見守り、一瞬の隙も見逃さぬとばかりに、かっさらう時を狙う。

 

・・・だが、クリスはまだ分かっていなかった。策士になろうとしてもなり切れぬ事を。幸太への恋心を抱く自分にとって、氷雨とのいちゃいちゃを見続けるのがどれだけ辛いのか、という事を。

 

「コータに恋をしたのっ」

 

自覚してしまった恋心は、抱えきれぬほどに膨張を続ける。その想いが、幸太の邪魔をしてしまう。渡したくないと、心が叫ぶ。

 

しかし、そんな中。幸太も知らなかった氷雨との関係性の秘密が明らかとなる。何故告白を受けてくれたのか、という真実が明らかとなる。

 

それは二人の関係を一度フラットにする合図。だからこそ、このラブコメはここからが本番なのであろう。

 

どこかズレた者達による軽快な会話劇が一つの見所である、ドタバタラブコメとしてのこってこての王道を突っ走っているこの作品。故に、この作品は真っ直ぐに面白い、と言えるのである。

 

古き良きラブコメが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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