読書感想:恋人代行をはじめた俺、なぜか美少女の指名依頼が入ってくる

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。家事代行、友人代行、など様々な代行サービスが世の中に溢れているのは恐らくご存じであろうが、恋人代行サービスと呼ばれるサービスについてはどう思われるであろうか。不誠実だと批判するか、時流に合ったものだと肯定されるであろうか。

 

ではこの作品の感想を書き始める前に、まずはこの表紙を見てもらいたい。明らかにデートである。どう見てもデートである。

 

だがしかし、この光景は本当の意味でのデートではない。あくまで恋人代行サービス中の出来事なのである。

 

気遣い上手で優しい、お人よしな大学生の司馬龍馬。この作品の主人公である彼は、バイト先である本屋の移転という問題に直面し、高時給のバイトを求めていた。

 

その彼と同じ大学で「ロリリン」という渾名で有名な、PN「でびる」という漫画家の裏の顔を持つ姫乃(表紙)もまた悩んでいた。口では恋人なんて要らないといいながらも、やはり恋人が欲しかったから。

 

そんな二人は、恋人代行サービス、「ファルファッレ」を通して出会い、疑似恋人としてデートを始める。

 

「いきなり手を繋ぐの恥ずかしいから、・・・・・・まずは小指を繋ぐ」

 

もどかしくも始まった二人の疑似デートはまずは小指を繋ぐ所から。定番のデートコースを周ったり、評判の店を覗いてみたり。

 

そのもどかしさとこそばゆい時間の中に恋の甘さが確かにある。しかしこの恋は偽物である。けれどどんどん、姫乃は龍馬の事が気になってしまう。のめり込んでしまう。

 

「う、うん。大好きだよ」

 

姫乃の友人に目撃された時、咄嗟に口車を回して庇ってくれて、嘘とは言え好きと言ってくれて。

 

「このバイトをしてる以上はそれくらい覚悟してるし、姫乃を守れるように動くつもりだから」

 

思わぬ切っ掛けから同じ大学であると判明し、彼氏がいると噂になってしまった時。期待してなかった守ると言う言葉を言ってくれた。

 

どんどんと膨らむ、それは「本物」の恋という感情。今は未だ気付いていないけれど、彼女の心の中には確かに恋が芽生えだしている。しかしそれは、彼女だけではない。

 

龍馬のバイト先に顔を出す、甘えたがりで寂しがり、陽気なギャルの愛羅。

 

龍馬に兄代わりになってほしいと持ち掛けて契約を結んで。二人でデートして、時間を重ねて。

 

彼女の中でも大きくなっていく、それもまた「本物」の恋。

 

そう、「偽物」が「本物」にならないなんて誰が決めた。偽物と割り切っていても、人の心は騙せはしない。だからこそ人の心は変化するのだから。

 

お金が絡むリアルな側面を見せ、簡単ではないと見せつけて。

 

だが、まるで舌の上でチョコレートが蕩けるかのような濃密な生まれたての恋をこれでもかと味わえる。この作品はそんな作品である。

 

ホットココアのような甘さのラブコメが好きな読者様。甘いだけではない恋が好きな読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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