読書感想:オーク英雄物語2 忖度列伝

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前巻感想はこちら↓

読書感想:オーク英雄物語 忖度列伝 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 

さて、今巻の表紙をまずはよく見ていただきたい、画面の前の読者の皆様。表紙からして一大スペクタクル、ゾンビ映画か何かのポスターのように見えてくるこの作品。だがしかし、表紙上部の不気味な奴等は今巻の敵であり、表紙右奥の剣士は我等が童貞、バッシュである。そして表紙手前のエルフこそ、今巻のヒロインであり求婚相手、エルフの重鎮、サンダーソニアである。

 

サンダーソニア、彼女は前巻のヒロインと違い、バッシュとは初対面、という訳でもない。そして近親者がオークと因縁があるわけでもなく、彼女自身が大戦の中、バッシュと三日三晩戦い敗北するも、何故か連れ去られなかった事で、妙な噂が立ってしまい結果的に行き遅れているという婚期を逃したエルフである。

 

だがしかし、他者を排除するプライドの高い傾向にあったエルフは今、周囲に門戸を開いた解放政策を取り、言わば産めよ増やせよの政策を掲げていた。

 

それもまた仕方のない事かもしれない。何せ百年もの間続いた戦争がようやく終わり、旧来のプライドも制度も全てが破壊しつくされたからである。そして、旧来のプライドや難点を担っていた戦争開戦前の世代が残らずいなくなってしまい、旧来の悪習に無縁な新世代が活躍できる土壌へと移り変わっていたからである。

 

つまりは今、エルフの女性は狙い目である。異種族との婚姻をバンバン推進している、正に据え膳な状況である。

 

「モテねぇ男に」

 

「麗しいエルフに」

 

「乾杯!」

 

そんな正に好機な状況で、偶々出会ったかつての因縁の相手とお互い気付かず酒を酌み交わしたりしながら、サンダーソニアへと不器用なアプローチを試みるバッシュ。

 

だがしかし。この素晴らしき国にも不穏の種が確かに芽吹いていた。それを齎すのは誰か。それはかつて戦死した者達の蘇ったゾンビの大群。そしてそれを率いる、この森で戦死したオークの将軍、バラベン(表紙左上)。その副官であったオークメイジ、ガンダグーザ(その右隣)。

 

迫る不死者の軍勢がエルフの都に迫り、バラベン達の魔の手がサンダーソニアへと迫る。

 

だが、それを黙ってみている我等が英雄、我等が童貞のバッシュではない。

 

「これから先、お前には指一本触れさせん。安心して、そこで見ていろ」

 

彼女を守る為、その前に立ち力強く宣言し。

 

「だがゾンビはオークではない。オークではない者が、オークを語るな」

 

かつて憧れた男へと一人の戦士として向き合い告げる。確かな尊敬と哀切を以て、今度こそ終わらせるために。

 

そう、正にその背は英雄であり、語り継がれる物語のように。図らずもその行いは戦後の世界の火種を消し、全種族にとっての平和の守り手へとなっていく。

 

相も変わらずすれ違い笑い。そして熱い戦いに心燃やせる今巻。

 

熱い王道ファンタジーが好きな読者様、前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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