読書感想:オーク英雄物語5 忖度列伝

 

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読書感想:オーク英雄物語4 忖度列伝 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、何だか一年一回、キノの旅みたいな感覚になりつつある今作品、勇名から逃げられぬので結果的に世直し、時代劇的な旅になりつつあるバッシュの旅のお話であるが。画面の前の読者の皆様、この作品の世界にはサキュバスが単一の種族として存在している事を覚えておいでであろうか。 サキュバス、と言えば画面の前の読者の皆様の大半はエロに直結させて連想されるであろう。男性の精を吸い取り、男性を絶頂に導く。そんな存在と関わる事になったら、どう考えてもバッシュの童貞がお亡くなりになる気がするが。果たしてどうなるのであろうか。

 

 

と、まぁそんな心配もあるかもしれないがこの作品におけるサキュバスは、中々に独自の味付けをされている。精を吸い取る、という生き方はそのまま、そして割と上意下達な軍人的思考で生きており。更には精を吸い取るのが只の食事、故に一人の存在と番う、という文化とは無縁なのだ。

 

しかしここで思い返してみてほしい。 バッシュの目的地は悪魔の国、サキュバスの国ではない。つまりはどう考えても寄り道になるが、何故そうなったのか。

 

「オレを、あなたの弟子にしてください!」

 

そこには無論、理由がある。 豪雨の中で訪れた悪魔の国との国境にある関所の砦、しかしそこは何故か争った形跡はあれど死体も血痕もなく。とりあえず書置きを残して通過しようとしたら、川にかかっていた橋の崩落でバッシュが流されてしまい。流された先で水の精霊に助けられ、その場にいた傷だらけの女騎士とグリフォンに殺されかけていたオーガの兄妹、ルド(表紙右下)とルカ(表紙上)を助けた事で、ルドが押しかけ弟子となったからだ。未熟に過ぎたルドを、自分なりに鍛える中。サキュバスの国を護る結界に迷い込み、かつて戦場で助けたサキュバス、ヴィナス(表紙中央左)に魅了をかけられ。危うく童貞を捨てて、サキュバスと交わる事で魔法戦士確定になりそうになるも、バッシュに気付いたヴィナスが魅了を解いた事で何とか押し留まり、はぐれたゼルがそこにいるという事で、一先ず立ち寄る事となる。

 

 

さて、戦争により荒廃したサキュバスの国に蔓延しているのは何か。それは慢性的な飢え。それは精を主食とする種族適性のせいで。餌たちの待遇改善も心掛け、確かに変わりだしてはいる。しかし蔓延した飢えは、そう簡単には変えられぬ。そんな場に、バッシュとついでにルドを放り込んだらどうなるのか。それは最早、鴨が葱を背負って来るの最上位のようなもの。国中で狙われ、何とか堪えつつ。サキュバスの女王であるカーリーケール(表紙中央右)にも挨拶し、食堂を見学したりする中。傷だらけの女が再び現れ、サキュバスの聖域が侵害され。ルドとルカの願いを受け、バッシュが代理で戦う事となる。

 

「俺はお前と戦い、生き延びたことを誇りに思う」

 

さて、無敵のバッシュならば造作もない、かと思われたがそうでもなく。寧ろ名乗る名を持たぬ女戦士と腕前は互角、一晩以上戦い続け互いに回復しきれぬ分水嶺を超えそうになり。彼の誇りを護る為、女戦士はルドとルカに声をかけ。復讐を自身の手で行う、と決めた事で勝負は流れる事となって。その先、バッシュは一つの成果を得る事となる。

 

しかしどうも、死者の復活を願う敵の陣営は、どうも一筋縄ではいかぬらしい。 かの女戦士のように、バッシュにも劣らぬ腕利きがいるらしい。

 

果たして、この先の旅の行方とは。シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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