読書感想:失恋後、険悪だった幼なじみが砂糖菓子みたいに甘い ~ビターのちシュガー~

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。この記事は今回特にネタバレを含む事が予想されるので、ネタバレが嫌いと言う読者様は今すぐブラウザバックした後速やかにこの作品を購入、その後この記事を読んでいただきたい次第である。

 

突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方は大切な人の死というものを経験したことはあられるだろうか。大切な人の死を忘れ振り捨て進むか、それとも抱えて自分の一部とし何処までも歩いていくか。貴方はどちらだろうか。

 

この作品は主人公である悠が寝込んでいるシーンから始まる。

 

何故寝込んでいるのか。それは彼女と別れたから。何故別れたのか。それは、彼女が突然の交通事故により亡くなってしまったから。

 

彼女が亡くなった事を急には受け止めきれず心の均衡を崩し。一人寝込む悠。

 

そんな彼の元に救いの天使とも呼べる存在がやってくる。それは誰か。その名は心愛(表紙)。悠の家の隣の部屋に住む幼馴染であり、いつの間にか嫌われたかのように疎遠になっていた幼馴染である。

 

「迷惑でしたら帰りますが?」

 

そう言いながらも家に乗り込み看病し。悠が学校に復帰した後も献身的に支え、彼の隣で笑顔を見せる。

 

その心の中、輝くのは一つの感情。それは悠が好きであるという今も昔も変わらぬ、たった一つの純粋な想い。

 

自分もまた大切な人を失った時に支えてくれて。気が付かない間に好きになっていた。だけど気付いた時には彼は他の人を好きになっていた。だから嫌いになろうとした。この想いを捨てようとした。

 

だけど捨てる事は出来なかった。その最中、あの事件は起こってしまった。彼が傷ついているであろう事は誰よりも分かっていた。だからこそ、隣にいなければと強く願った。

 

「勇気の神さま、お願いします。少しだけ、ほんの少しだけでいいので、力を貸してください」

 

想いを伝える勇気が無くとも、今この時だけはと願って。結果として彼の隣という場所をもう一度手に入れて。

 

彼女が隣にいる事が悠に齎すもの、それは人の温もり。彼が取り戻していくもの、それは誰かを好きになるという亡くした筈の感情。

 

「・・・ばーか」

 

あの日と変わらぬ距離感、それが何よりも心地よくて。側にいてくれる彼女の笑みに目を奪われて。

 

「そうか。まあ、これで証拠は残ったわけだが」

 

だからこそ、まるであの日のように彼女を蝕む悪意に立ち向かう。自分が傷つくのも厭わずに。

 

この作品は、悠という恋を亡くした一人の少年が周囲の助けと心愛の献身を受けて再生する中、その胸に恋心を芽生えさせていく作品である。そして心愛という一人の、片思いを続けていた少女が亡くした想い人という光に囚われた彼に、必死に手を伸ばす作品なのである。

 

「そうですね、力強いものです」

 

今は未だ想いを伝える事は出来ないけれど。彼の心の中に息づくのはもう鈍る事のない停滞した光だけど。

 

それでも勝ちたい。報われたい。

 

それこそが正にビターのちシュガー。心愛という一人の少女の、願う未来なのだ。

 

 

ちょっと切なくて、でも温かなラブコメが好きという読者様。しんみり泣けてじんわり温まりたいという読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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