前巻感想はこちら↓
https://yuukimasiro.hatenablog.com/entry/2020/04/25/235653
TRPGにおいては何処にファンブルに繋がる出会いが転がっているか分からない、ものだとすればこのエーリヒの周りにはファンブルだらけなのかもしれない。では今巻は一体何が描かれるのだろうか。
前巻の最後、謎のとんでもない力を目覚めさせたエリザ。彼女とエーリヒの前に現れたのは帝国魔導院の魔導師、アグリッピナ。彼女が告げたのはエリザが半分妖精であるという真実と、このままでは彼女は悲惨な運命を辿ってしまうという現実。
その未来を回避するためにアグリッピナが提案したのは、自分の元で修業し力を使いこなせるようになるという事。
その提案を受けるという事、それ即ち村を離れて、マルギッテの元を離れる事になるという事である、当然であるが。
「誓えますこと? きちんと丁稚を勤め上げて冒険者になると」
「ああ・・・・・・誓うよ」
夕陽の中、血染めの笑顔で交わされるのは重くて絶対の約束。それを笑顔で出来るマルギッテは正にメインヒロインの貫禄であると言っても過言ではないかもしれぬ。
しかし、アグリッピナにより魔導の入り口へと連れていかれて新たなビルドの道が開けたエーリヒを魅了しようと現れた、二人の影。
それこそが今巻からの新たな登場人物であり新たなヒロイン(?)、妖精のウルスラ(表紙左)とロロット(表紙右)である。
初めにウルスラに見初められ、彼女の依頼で風妖精のロロットを助け出し。
対価として特別な力と武器を受け取り、エーリヒは益々戻れぬ場所へと、致命的な方向へと進んでいってしまう。
その途中で出会った、出会ってしまった。目的を為す為には甘い考えを捨てなければ勝ち抜けぬ相手に。何処までも世界はエーリヒに厳しく。出会ってしまったからこそこの結果が齎されたのだ、と言わんばかりに繰り広げる死闘。
「そう・・・・・・だね。疲れたなら、休むといいよ」
この死を自らの心に消えぬ傷として刻み込み、決して自らを許さずに。一つ死を抱えまた強くなったエーリヒは進む、帝都へ向かって。
そう、ここまで読まれた画面の前の読者様であればもうお分かりかもしれないが、今巻は目的の帝都へつくどころかまだ旅路の途上である。しかしそこでも、濃密なイベントが描かれる事で作品としても味わい深さが出ており、一歩ずつだからこその面白さが見えてくるのである。
前巻を読まれた読者様、今巻も前巻も読むという読者様。例えばファミ通文庫の某迷宮作品が好きだったという読者様は是非。きっと楽しめる筈である。