前巻感想はこちら↓
https://yuukimasiro.hatenablog.com/entry/2020/06/25/234357
ヒーローとは誰の為、何の為のヒーローか。求められるのは希望となる事。だけど仮面の下の心は確かに英雄であるのか。
前巻の最後、新たなる大魔術師、クアルダルドに客人として囚われ、彼の希望により彼の取って置きの使い魔との戦いの中、隙をついて逃亡したユウとアイン。二人はようやく仲間達と合流し、水上租界で一時の安らぎを得る。
しかし、その心に去来し風の王との不和を齎すは正義への疑念。何故自分がヒーローとして戦うのかという思い。
確かに彼は受け継いだ。ルドラという全てを黙らせることもできる最強の力を。だけど誰も、ヒーローとしての心構えなんて教えてくれなかった。
なのに容赦なく、人々は着装者三号という偶像に希望を見出し、英雄である事を押し付けてくる。希望となれ、そして戦えと。
だけどその希望になれと望んでくる者達は決して綺麗な者ではない。水上租界だって平和に見えても、人とエルフの不和が存在しエルフへの疑念を持つ人もいれば、己達の手に権力を持とうと動く輩もいる。
それこそは見たくもないのに見せられている、人の心の闇。そんな奴等の希望にまでなる必要なのかと悩むユウの心理は当然であるのかもしれない。だって彼はまだ少年だから。
そんな彼を戦いにおける先導者として導くはなつきの役目。まだ高校生の身でありながら各地を放浪し様々な地獄を見てきた彼女だからこその役目。
「手のとどくところにいる『みんな』をできるかぎり、全力で守るってだけだもん」
彼女が示す道筋は、今力を手にしたユウだからこそ出来る、とても簡単な道。そして清濁併せ吞むのならばせめて仮面を被って。自分ではなく、着装者三号として。
「・・・・・・着装するよ、三号」
そして覚悟を以て愛機の名を呼んだその瞬間。
確かに彼は仮面のヒーローとして新生したのだ。そして一人の諸人を魅せる王が、ここに帰還したのである。
王は一人では全ては出来ぬ。だからこそ諸人を魅せ導き、そして自らの仲間達と共にヒーローとなる。
一人じゃない、いつの日も、何処までも。だからこそヒーローは希望を背負って戦える。
その彼の背を支え共に並び立つかのように、なつきの手に舞い降りるは六の数字を冠された最強の力。万雷を従えし絶対の矛。
全員の力を結集し挑む敵は、大魔術士の一人、獅子の魔女、スカールシャンス。
一巻だけでは半分にも満たぬ、この巻も含めて一つのプロローグであり、一人の王の復活が確かに示されるのである。
前巻を読まれた読者様は今すぐにでも、これから読むという読者様は今からでもすぐに読んでみてほしい。
本当のお楽しみは、きっとここから。