読書感想:僕らは『読み』を間違える2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:僕らは『読み』を間違える - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、青くて若く、時に間違え遠回り。青春の道程を辿る優真達。彼等は時に「読み」を間違え、時に正解しながら青春の時間を過ごしている訳であるが。恋に絡まる謎はそう簡単には、紐解けないのである。仮面の奥に隠れた心は、探偵を気取っても、解き明かせぬものなのである。

 

 

「ねえ、たけぴーはどう思う?」

 

前巻、拗れてしまった大我と更紗の関係。そこを気にする優真へ、漫画研究部の先輩である栞から押し付けられたのは、彼女の知己の相手であるとべっち先輩からの依頼。それは、この学校をモデルにしたと思われる学校が登場するラノベの作者を知りたいと言うもの。さて、誰が書いたかこの物語。一先ず小説を買いにいく為に向かった本屋で更紗と遭遇し、あっさりとその作者が駅前の喫茶店の娘であり先輩である香織という生徒だと明かされ。拍子抜けしながらもサインを貰いに行く中、香織本人から作者ではないと否定される。

 

「これに、サインを書いてもらえませんか?」

 

―――では一体、本物はだあれ? その答えは物語の中に。書かれ方と建物の描写、そこに答えがあった。その答えを解くも謎を明かすことは望まぬ優真。だがひょんな事から作者は彼であるという誤解を受け、彼は本当の作者の事も考え。「現役美人覆面女子高生作家」の仮面を被る事に決める。

 

仮面の奥に隠れた思い、それは誰もが持っている。例えば彼女が仮面を被っていたとしても、自分には見破れないだけかもしれないし、本当は仮面を被っていないだけかもしれない。

 

そんな新たな仮面に惹かれ、優真の元に持ち込まれるのは新たな依頼。それはとある事故により分裂してしまった演劇部の、現三年生の最後の舞台を成功させると言うもの。脚本家として関わる事になり、自身にとっての武器である濫読家としての知識から、古典文学を組み合わせた脚本を生み出して。時間がない中、大我や葵、更紗や瀬名も巻き込んで舞台への準備が始まる。

 

だがそんな中、判明するのは脚本の書き換え。仲たがいした部員のリーダーである城井が舞台を乗っ取り、既に幕が上がっていた舞台は書き換えられていく。

 

その改変を望むか? そんな結末で満足か? それが望んだ結末か?

 

「ユウは、それでいいの?」

 

「行けよ。真打登場だ!」

 

―――そんなのは嫌だ。ならどうすればいい? 簡単だ。真打登場と言わんばかりに乗っ取り返せ、そんな世界は壊してしまえ。例え未熟でも、見苦しくても。優真は舞台をぶっ壊さんと、強引に物語を改変する。

 

「伊達と酔狂は僕の専売特許です」

 

今巻の題材である、リア王ハムレット、数々の名作を生み出したシェイクスピアからの問いかけ。それに対する答え、笑いたければ笑えばいい。例え明暗分かれる結果になろうとも、この皆で何かをやりたいから。この思いが、未熟で青い、けれど全てをかけられるこの毎日こそが大切なのだから。それが彼の選んだ答え、導いた結末。

 

伊達と酔狂、その先に。新たな読みは間違われ、新たな思いは繋がっていく。その先、どんな青春が見えるのか。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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