
さて、特撮ヒーローと呼ばれるヒーローたちの中でも特に仮面ライダーとウルトラマンは、己の正体を世間から隠しながら戦っているものであり、その正体バレ、というのは丁寧に描かれ何かのフラグになったりすることも多い。二年前くらいの蛮族と呼ばれたウルトラマンのように、最後まで世間に正体がバレない、と言う事も極まれにあるのだが。それはともかく何が言いたいか、というと。正体バレ、というイベントは往々にして物語の中の中盤以降、特に終盤辺りに起きることの多いイベントである。
ではこの作品はどんなお話か、というと。その正体バレが早々に起きて始まるお話であり。仮面を取れば快男子、な主人公が無双するお話なのだ。
異世界のとある王国、その巷に広がるのは「黒騎士」という人間の噂。蔦で出来たような仮面をつけ、巨大な剣と強大な魔法を使いこなし、助けを求める声に何処からともなく応える為に現れ、助けとなって去っていく。
「何がどうしたらこんな未来になったんだ!?」
ある日、偶々記者に見られてしまい露呈したその正体、それはアデル(表紙左)という侯爵家の少年。騎士団長や英雄と言った偉人たちを数多く輩出してきた家に生まれながら、何の才能も持たず恥さらしと呼ばれた彼。だが彼は、只己の実力を隠していただけ。 それは、かつて自分が助けた貴族令嬢、エレシア(表紙中央)に甘やかされる自堕落ライフのため・・・・・・
「困っている人がそこにいるのに、見て見ぬ振りしたら寝覚めが悪いだろ」
・・・・・・と、言いながら。只寝覚めが悪い、と嘯きながら。彼は黒騎士として戦っていたのだ。 しかし今、彼はあっという間に注目株、このままでは何処かの騎士団に入れられ自堕落ライフ崩壊の危機。それを何とかする為、一先ず情報が統制され出て行かない場所、全寮制の学校に入ることを決め。この時期に唯一転入生を募集していた王都の学園へと、二人そろって入学する。
「うちの相棒を馬鹿にするのは許せねぇんだ、よく覚えとけよクソ阿呆が」
「これにて閉幕。次からはちょっかいかけてくんなよ?」
当然、王都の学園では情報は届いておらず、アデルを見る目は厳しいものばかり。そんなアウェイな空気な中、一先ず自重しようとはするも、時にエレシアを馬鹿にされたり、手加減を間違ってしまい目立つことを余儀なくされ。そこで声をかけて来たのは、かつて自身が救った第二王女、ルナ(表紙右)とその護衛であるセレナ。兄である野心の高い王子、アリウスとの派閥争いに巻き込まれ、関わることは避けようと思った、途端ルナの派閥に所属する事を宣言してしまう。
「さぁ、戦ろうか元凶。 姫を守るのが騎士の役目なんだ、くだらん自己中並べて纏めてかかってこい」
当然、アリウス及び付き従う騎士たち。野心高いアリウスと、己の目的のために外道に身を堕とした騎士たちの策略が初めての試験中に炸裂し、それぞれ分断されてしまう。
だが、立ち止まるわけにはいかぬ。アリウスにより追い詰められたルナの助けを求める声が響く中、駆けつけるのはアデル。涙を見ない為、守り抜くために。拳を振るい、怒りの全力で圧倒し。
「俺に頼ればいい」
そして悪役にまで手を差し伸べる。何故なら心の奥底、助けを求めていたから。その手に手を伸ばし、助ける為の魔法を使い。事態を解決に持ち込むのだ。
普段は三枚目、だけど決める時は二枚目。そんなギャップのある快男子、正真正銘のヒーローの活躍に胸を熱くしたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。
Amazon.co.jp: 仮面の黒騎士。正体バレたのでもう学園でも無双する (ファンタジア文庫) : 楓原 こうた, へいろー: 本