
さて、最近コスプレを題材にしたラノベが少しずつ増えてきている気がするのだが、コスプレというのはイベントの時にカメラを持った人たちに囲まれている、という印象がある読者様も画面の前の読者の皆様の中にもおられるであろう。しかしコスプレ、というのはまぁ改めて説明すると、アニメや漫画、ラノベのキャラのコスチュームを作り纏う事であるのだが、その出来と言うのは作り手によって変わるものであり。作り手の腕が確かであれば、もはや本物と見紛うものも存在しているのである。
と言う訳でこの作品は、そんな作り手側、造形師の少年と、纏い手側、露出タイプのコスプレイヤーであるヒロインのお話なのだ。
とある商業高校の定時制過程に通う二十一歳、ひより(表紙)。ある日、彼女が偶々訪れた全日制の課程の方の文化祭、偶々入った工作部なる部室で見かけたのは、先日発売されたばかりの3Dアクションゲームの、爆発的に人気の出たサブキャラの武器。その完成度の高さ、そして発売から完成までの異様な速度に天啓を得、ひとまず二年生のりく、という多分少年が作ったという情報だけを得、後日。
「興味ないです」
「男子なのに!?」
交錯部の部室を訪ね見つけた造形師、りく。コスプレイヤーでもある年の離れた姉、うみの衣装の作り手を長年務め、独学で今の腕を身に着けた少年。しかし、衣装を作ってというひよりの依頼に予定が詰まっているからと一撃で断り、ひよりが血迷ってちょっとえっちな写真を対価にしようとしたら、うみが裸族な珍生物な為免疫があるのであっさり断られ。後日、夏コミの場で再会し。エロROMの物販などがメイン活動だが、カメコを持たないひよりの活動に、うみの一言でサポートとして組み込まれそうになり。
「お姉ちゃんはなんでこの人連れて来たの・・・・・・?」
更に後日、コミケの映像がテレビで流れた事で家族に活動がバレてしまったひよりが家から追い出され、うみに拾われやってきて。色々都合があって姉弟二人暮らしの家に居候する事になり、三人での生活が始まる。
「自虐は、他人を傷つけるんだよ」
距離感のバグった彼女に日々迫られお願いされ、仕方なく衣装作成と撮影を引き受けて。そんな中、彼女の適当な、だがそれが故に芯を捉えた言葉に救われるものがあって。彼にとっては姉の助け、それだけだった衣装作成が少しずつ、意味が加わり出して。
「ひよりさんも、遠慮しないでいいからね」
少しずつ、灰色の日々から遠ざかっていく中。始まるのはりくを巡る関係性。謎の態度を見せるうみ、ぐいぐいいくひより。そして、彼の事を気に入っている先輩のましろ。一筋縄ではいかぬ、こんがらがった関係性へともつれ込んでいくのである。
どこか切なくて、でもドタバタで甘いこの作品。ちょっとえっちなお姉さんに萌えたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。