
さて、昨今ラノベ界においては勇者の冒険のその後、という所謂魔王討伐後を舞台としたお話が段々流行を見せている訳であるが。そも言うまでもないが魔王討伐、というのは大仕事である。しかし魔王討伐後も勇者や仲間の人生は続くわけで。食い扶持を得る為には、何かしら働かないといけない訳であろう。しかし魔王討伐と言う大仕事を成し遂げたのなら、少しの間でも働きたくない、という心理が働いてもおかしくはないのではないだろうか。
この作品は、そんな魔王討伐後のお話であり。魔王討伐後の勇者パーティーの中でのモラトリアムラブコメである。
五百年以上続いた、魔物や魔族を率いた魔王が遂に勇者パーティーにより討伐された世界。勇者パーティーは四人メンバー。主人公である僧侶兼軍師なレクス、「勇者」の称号を与えられた剣士のノエル(表紙中央左)、冷静でシニカルな魔導師のアイナ(表紙右上)、ぴえんな可愛い系ながら巨大な斧を振り回す戦士のユフィ(表紙中央右)。
「―――倒さなければよかったなぁ」
しかし、レクスは後悔していた、魔王を討伐した事を。その理由とは、魔王と内通していた、からではなく。魔王が討伐されて脅威がなくなった事で、冒険者が段々不要になっていくであろう世の中で、彼ら勇者パーティーは国歌の要職に就くことになったから。だがレクスは自己評価低めにより、その話にどうもむず痒さを感じており。暫くはゆっくりしたいと考えていたのだ。
「働かなくていい。ヒモになりなよ、わたしたちの」
すると仲間達三人は、報奨金のほぼ全てを使って王都の高級住宅地に家を購入し。また働きたくなる時までわたし達に養われればいい、と言ってきて。猶予期間、という名目で、自分を思ってくれた提案を無碍にするのもなんか違うという気がして、その話を受けることに。
「だからこそ立てたのよ、この作戦―――告白猶予期間を」
だがこれは、ノエル、アイナ、ユフィの三人で立てた作戦。 旅の中で生まれ育っていた、レクスへの好意の感情。それを叶える為、しかしこの国では一夫多妻は無理なため、誰が選ばれても祝福する、という約束の元に、いくつかのルールを立てて、アプローチ合戦が始まる。
ある時は、迷宮配信で恋人同士のふりをしたり。またある時は、魔導書づくりで大変なハプニングを起こしたり。更にある時はコンカフェで、コスプレの格好で迫ってみたり。
そんな中、四人で冒険者ギルドで働きだした中、出会ったのはレクスのかつての仲間、シルヴィア。何もないという事だがどこか気安い様子にやきもちを抱き。仕事を共にする中、レクスの有能さが認められ正社員登用の話が来て、更には彼から結婚式の話題が出て。
「「「いまはまだ、内緒」」」
だが全ては勘違いであったと知り、告白猶予期間の作戦の弱点に思い至ったりしつつも、また再び四人でモラトリアムに戻っていくのである。
ヒロインの可愛さ山盛りな、甘めなドタバタラブコメが見所であるこの作品。可愛いヒロインに萌えたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。
Amazon.co.jp: 魔王討伐のごほうびはパーティー全員に養われることでした (MF文庫J) : 落合 祐輔, トモゼロ: 本