
前巻感想はこちら↓
さて、前巻で和泉を取り巻くヒロイン模様に七緒という遅れて来たメインヒロインがどこぞのチョクシンが如き勢いで告白をぶち込み始まったこの作品であるが。この作品のタイトルをもう一度よく見てみよう。ちゃんと好きって言える子無双、である。つまり、ちゃんと好きって言えれば無双できるのだ。誰も無双するのが一人、とは言っていないのだ。
そして、和泉を元々取り巻いていたヒロイン達が、七緒の存在に奮起しない、訳もない。つまりは彼女達もまた、勇気を出すべき時。その1人、白亜が動き出す巻なのである。
「―――事態は一刻を争います」
「あ、他の男の子は参加ダメだよ?」
前巻、七緒の脅威に対抗するために同盟を結んだ三人。しかし早速雨音が絆されてしまうという、良いんだか悪いんだかという状況に。裏で白亜が彼女達を利用しようと言う思いを巡らせる中、七緒は相変わらず和泉への攻勢をかけている。
「あの時助けていただいたキツネです♪」
その最中、和泉たちのクラスにやってきた帰国子女の転校生、明那。しかし彼女は、和泉の事を知っている、慕っている様子を見せ。 本音か冗談か分からぬ言動を見せてくる。
さて勿論、この世界にそんなキツネが転生するようなファンタジーな事情はない。そもそも和泉にそんな記憶はない。では明那とは何者なのか?
「だってウチ、和泉様のこと昔から好きですし~?」
その正体は白亜の父に仕える秘書長の一人娘であり、白亜とは幼き頃からの付き合いである。海外留学で高度な心理学を学んできた彼女が呼び寄せられたのは、偏に白亜の手駒として和泉を堕とす為に。だが白亜の予想に反し、明那は自分も和泉の事が好き、と告白しあっさり裏切り。 ヒロインレースに更なる嵐となって乱入する。
予想とは違い過ぎる方向へ進み過ぎて、ドタバタ模様がより深まる中。和泉がひょんな事から明那の正体を知ってしまい、白亜たちから距離を取り。本末転倒、もだもだの中でやってくるのは体育祭。 ここで勝負の時はやってくる。借り物競争の中、明那が仕込んだのは好きな異性、というお題。七緒は白亜の目の前、躊躇いなく和泉を選び駆けていく。
その瞬間、心より溢れ出したのは、令嬢でも、生徒会長でも、無論姉でもなく。彼女自身の、本当の思い。
「和泉くんのことが、ずっと好きだったのっ!!」
只の女の子、としての思い溢れて。ぐしゃぐしゃな顔でも真っ直ぐに。やっと白亜も一歩進むことが出来て。
「これから楽しみです」
「うふふ。わたくしを本気にさせたこと、後悔しないといいですね?」
七緒に並び、白亜が立って。ヒロインレースがこれより幕を開けるのだ。
本気でぶつかる恋がはじけて、物語が動き出す今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。