さて、最短距離で突っ走るのはどこぞの某チョクシン狂いな訳であるのだが、画面の前の読者の皆様もこうは思われた事はあるのではないだろうか、ラブコメを見て。さっさと告白すればいいのに、と。実際その通りである、と言えるかもしれない。好きなら好き、とさっさと言ってしまえばいいのに、とやきもきされる方もおられるかもしれない。しかし、告白と言うのは一大イベント、ラブコメにおける山場であるので。そう簡単に辿り着けるわけでもないのである。
ではもし、そんな告白を真っ直ぐにチョクシンで最短距離で行うヒロインが居たらどうなるのか? というのがこの作品であり。そして作者である七菜なな先生が、登場する全員が幸せになる、宝石のように輝く素敵なラブコメ、というコンセプトを最初に出した後巡り巡って完成したのがこの作品、という何がどうしてこうなった、という宇宙猫のようになれる作品である。
役立たずと言われ実家を追放された少年、和泉。元実家は太いもその庇護は受けられず、現在只の一般人。
「俺が合コンなんて行ったら、おまえらに一人も女子が残らねえからな」
強いて言うなら自他ともに認めるイケメン、しかしトーク力なし。そんな彼に懸想する女の子が三人。
「雨音がこんな弱いとこ見せるの、和泉っちだけなんだからね・・・・・・?」
『学園の憧れアイドル様は、二人きりのときだけ甘え下手な頑張り屋さん』、 モデルも務め成績も優秀、と思いきや実は和泉から勉強を教わっているギャル、雨音(表紙奥左)。
「お姉ちゃんのお話を無視する悪い子には、もうご飯を作ってあげませんよ?」
生徒会長を務めるクールな「氷姫」、和泉の元婚約者。『氷の女神様は、俺にだけ甘みが過ぎる ~実家から勘当されたのに、なぜか元・許嫁が放っておいてくれないんですが~』 な白亜(表紙最奥)。
「せっかく運命の再会に恵まれたんだから、もっと素直になればいいのに~」
所属する文芸部の天使な後輩、の隣にいるツンツン小悪魔、だけど本当は素直になれないだけな後輩の波留(表紙奥下)。 『学園の天使ちゃん・・・・・・の隣にいる悪魔ちゃんが、案外ちょろいことを俺だけが知っている』
いずれも、彼女達がヒロインであればそんな題名になっていただろうしラブコメとして一本書けていたであろう。だが彼女達はそれぞれ今の関係を崩すことを恐れ、お互いの存在には気づかぬままになあなあでぬるま湯の中。
「好きです。付き合ってください」
そんな停滞、言い換えれば凪。そこへ一石を投じるどころか隕石が如き勢いで突っ込んできて全てを終わらせるのが今作品のメインヒロイン。転校生であり和泉に助けられた事で好意を抱いた七緒(表紙手前)である。停滞した状況何ぞ気付かず、関係ないと言わんばかりに直球勝負。内心でびくびく、勇気を出した事を隠しながら。
「ぜったいに、わたしのこと好きにさせるからね」
「好きな人に好かれたくて頑張ることの、何が悪いの?」
まさに蹂躙、容赦なし。動き出そうとする負けヒロイン達。彼女達の言葉には真っ直ぐに毅然と返し、和泉には真っ直ぐに告げて。 バトルロワイアルを始めながらも、あっという間に加速し追い込んで抜き去っていくのである。
正に衝撃、軽妙な語り口の中に秀逸なラブコメが光るこの作品。衝撃を受けてみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。