前巻感想はこちら↓
読書感想:僕らの春は稲妻のように - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻を読まれている読者様であればこの作品のタイトルに込められた意味、そしてヒロインである白亜が抱えている事情、というものはご存じであろう。体内に抱えた爆弾、それがいつ爆発するかは分からないけれど、それでも終わりの時は必ず来る。だけどもし、終わりの時が来ても呼び戻すと。稲妻のように駆け抜けていく彼女を引き留める為のこのラブコメ、譲と白亜の中々言語化しにくい関係。では二巻となって、白亜がその歩みを止めるか、というと。勿論そんな訳はない。
「猛スピードだよ、猛スピードっ」
前巻の最後、入院した後に退院した後、白亜は譲を自宅に誘い。二十四時間介護してみた、という企画を打ち出し、更には放送部の目標として譲に愛してる、と言わせる事を目標とし。入院中にたまったエネルギーをこれでもかと発揮し、今巻もまた猛スピードで駆け抜けていく。
白亜に振り回される同士として、譲が級友である緋奈と同盟を結ぶのを余所に、いきなりサプライズで限られた級友に招待状を送り付け、譲にはぎりぎりまで内緒にし婚約発表パーティを開催し。いきなり二人の関係は許嫁から婚約者となり、結婚まで更に秒読みとなり。
更にはいきなり新居探しと言う事で譲を連れ回し、新聞部とのコラボで模擬結婚式を開催しウェディングドレスを纏って記念撮影までこぎつけ。ラーメンを食べたい、と思えば本場である札幌までひとっとび。
正しく、今巻も猛スピードである。それこそ前巻よりも、更に。その根底にあるのは焦燥感、生き急ぎという感情なのだろう。まだ結婚できる年でもないのにウェディングドレスまで纏う、それこそが何よりの証拠なのかもしれない。
そう、まだ結婚できる年ですらない。時々忘れがちになるかもしれないが、譲も白亜もまだ中学二年生、それこそ大人に移り変わる頃でもないのに。多感な時期を飛び越して、その先へと言わんばかりに。駆け抜けていく。
それのままに突き進むだけでは、様々な事を取りこぼしてしまう。知っておきたい、知りたい情報すらも取り切れぬ。誕生日を知りたいと、周りに聞いて慌てて準備したり。譲の過去、一般人としての生活の痕を今更ながら知ってみたり。
「実は、それでよかったと思ってるんだよね」
そんな全速前進の先、白亜が秘めていた思いは明かされる。愛してる、は今はいい、言われたくはない。何故ならそれは彼にかける呪いだから。彼に刻む爪痕だから。
「白亜、僕は必ず君とキスをする。もちろん生きている白亜と」
だけど、それでもいいと。愛していると言う言葉なんていらない、代わりに未来への誓いを。譲から持ち掛けられた約束は結ばれ、また一つ未来への道筋が固まっていく。
根底のシリアスは変わらず、猛スピードが更に加速する今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。