
前巻感想はこちら↓
さて、前巻で始まった恆と果南、瑠音の三角関係。光へと向かう瑠音と、闇に堕ちていく果南という対比で前巻は締めくくられていた訳なのだが、先に少し残念なお知らせをさせていただくと、この作品はこの巻で完結である。しかしまぁ、あまり長々背徳を続けるような空気でもないし、延々続くよりはカラッとしたうちに、笑顔でお別れを言えるくらいが丁度いいのかもしれない。さて、では今巻でどんな完結を迎えるのだろうか、というと。
その答えとしては、恆と瑠音にとってのハッピーエンド、と言えよう。だがそこまでの道のりは正にジェットコースターのように波乱万丈、急転直下であり。メザードが作り出す悪夢の様に複雑怪奇、ウクバールへ至るお話のように、複雑な気持ちが沸き上がる正にウルトラCが如き道なのだ。
「こんなにも簡単にワタが私を裏切るとは思えないよ」
「改めて見てみて、どうだい?」
前巻の顛末、果南の望みのままに一線を越えて、後。友人である沙織と由奈に恆の事を相談する瑠音は、彼の事を信じたいと心を揺らし。だが、そうとも知らず恆はどんどんと果南の術中に嵌っていく。 映像研究部の活動として見るのは、果南との数々の営みの記録。まるで精神をおろし金で削られるかのような行為、しかし目を逸らす事は許されぬ。それでも、自分にとっての彼女は瑠音だから。だから果南とはまた親友に戻りたいと願う。だけどそれは、甘っちょろい、子供のような望み。 それを聞き果南は、追いかけっこというアオハルらしい行為を提案する。
「・・・・・・さよなら」
無論、陰キャ同士とは言え恆と果南の身体能力には隔たりがある。 だが、覚えてしまった果南の肉体の味が、耐えられぬ疼きを呼び。見つけた果南はそれに応え、性行為をトイレで、見せつけるかのように行い。 その行いは周りにも露呈し、瑠音の耳にも届き。今まで自分が無意識にしてきたように、裏切られてしまい。さよならを告げる。
ここからいきなり、状況は急転直下。姿を消す瑠音と果南、実は呪術師見習いであった由奈が恆に告げたのは、言霊と呪術の関係。瑠音が囚われている悪夢の世界へと迎えに行き、そこに巻き込まれているらしい果南を探す中、恆は見てしまう。自分もまた、裏切られていたという証を。
「でも浮気はする」
「うん。でも君の浮気も許す」
問い詰め、開き直り。だけどそれは、悪夢を覚ます鍵。変わるのではなく変わらない事、変わらぬまま愛してくれる相手を見つけると言う事。 お互いに本音を曝け出してぶつかり合い、結果として己の思いに正直になって受け止めあい。
「好きだよ、ワタ。その気持ちは確かだよ」
浮気もするし、目移りもしてしまうけれど、それでも好きなのは確かだから。だからこそ、また続けることを選ぶ。この、あまりにも愚かな恋、だけど何だかんだ割れ鍋に綴じ蓋な恋を。
一気にエロの道を駆け抜けていく今巻、前巻を楽しまれた読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。
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