読書感想:友達の後ろで君とこっそり手を繋ぐ。誰にも言えない恋をする。3

 

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読書感想:友達の後ろで君とこっそり手を繋ぐ。誰にも言えない恋をする。2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 恋は盲目、恋は毒。その毒に浸されきり、どこまでもその深みに堕ちていく純也と夜瑠の二人。子供であるからこそ、多くを望み強欲に全部を抱え込もうとする。自分なら抱え込めるはずであると、友人達を騙しながら自分達の恋を貫こうとする。それは青さと若さの発露、と言っても過言ではないのかもしれない。多くを望む事を諦める年代ではない、若さだからこその選択肢と言えるのかもしれない。

 

 

だが忘れてはいけない。それは何処までも、不純であるという事を。何かを抱えて生きていくという事は、常に息の詰まるような緊張感の中で露呈の危機に晒され続けるという事を。そして、どんな生き方をするにせよ抱え続けるものはいつか、払わなければいけないという事を。

 

『人間、理想だけを求めすぎると、必ず危うい方向に向かうんだ。それだけは覚えておけ』

 

秋を越え季節は冬へと、恋人同士としての季節が巡って来ようとする中で。夜瑠に恋心を抱く新太郎と夜瑠をくっつけようという計画が持ち上がり、純也はそれに曖昧な返事をする事しか出来ず。その心を父親からの言葉が突き刺していく。

 

それでも、夜瑠の手だけは離せない。自分達ならきっと大丈夫だと。どこか妄信するように、隠し通すと言う事を選び。夜瑠との関係に溺れていく。

 

―――しかし、彼等は気づいていなかった。知らなかった。一つの歪みがまるで波紋のように、彼等の関係に罅を入れていくという事を。隠しきったと思っていても、隠しきるのは不可能であったという事を。

 

何となく気が付いている火乃子は、新太郎の恋を利用する形で純也に仄めかしながらも距離を詰め。自分が愚者に位置しているとも気付かず新太郎は、恋を求め。そして深まる不穏に青嵐もまた何かを感づいていく。

 

「お前、成嶋と付き合ってんの?」

 

一度歪んでしまったのなら、崩壊への歩みは止まらない。積み重ねた不穏と予感の末、とうとう決定的な証拠と共に彼等の関係は露呈し。恋の毒は全てを壊し、廃墟にしていく。

 

それでも、まだ諦めきれなかった。もっと、それでもと。罪を自覚していても求めた。残り火のような友情をまた繋ごうと純也は求め、夜瑠もまたそれに協力し。これが最後のバカ騒ぎと言わんばかりにあの日のように集まって騒ぎ。時が止まって欲しいと願えど時は止まらず。けれど、永遠の廃墟よりはマシな形で彼等の友情は終わる事となる。

 

自然に皆、同じ答えを選び。それぞれの道を歩き始め、皆がそれぞれ少しずつ大人になっていく。友情に、恋に代わるものを自らの心に詰め込み、あっという間に二年の時が経過する。

 

「それでもあなたのいない世界は嫌だッッ!」

 

―――けれど、それでも。違う形で満たされた筈の心は、満たされなかった。身勝手だと分かっている、傲慢だと理解している。それでも、恋は無くせなかった。傲慢でも強欲でも、相手を求めたかった。卑怯と蔑まれても、反省していないと罵られるとしても。二人はまた、一緒に居る事を望み選んだのである。

 

咲いた花はあまりにも昏く、研磨された宝石はあまりにも歪。けれど確かに彼等の間にあるのは愛、純愛。大人になったつもりでも抗えなかったその思いで、また二人は歩き出す。

 

その答えを皆様は非難されるだろうか、それとも言祝ぐであろうか。その答えを、この作品の愛の答えを、皆様の手で是非決めてみて欲しい、自分だけの答えを。

 

最後まで、皆様も是非見届けて欲しい次第である。

 

友達の後ろで君とこっそり手を繋ぐ。誰にも言えない恋をする。3 (電撃文庫) | 真代屋 秀晃, みすみ |本 | 通販 | Amazon