読書感想:エイム・タップ・シンデレラ 未熟な天才ゲーマーと会社を追われた秀才コーチは世界を目指す

 

 さて唐突ではあるが、先日パリオリンピックパラリンピックは無事に閉会したと言うのは画面の前の読者の皆様もご存じであろう。では数々の競技のテレビ中継をご覧になっていたという方はどれだけおられるであろうか。見るとしても興味のある競技だけ、という方もおられるかもしれない。ではそんな方であれば、どんな競技なら見たくなるであろうか。

 

 

その答えに関するであろう興味のある分野は各自それぞれ異なるであろうなので明確な答えはないだろうが、今、オリンピックの追加競技としてeスポーツというのが考えられていると言う話はあるらしい。eスポーツ、とても簡単に言ってしまうとゲーム。昔の人であれば何を、というかもしれない。しかし今の時代であればおかしくはないであろう。 いつかTCGもオリンピック競技になってくれたりしたら、私は画面にかじりついてでも見るかもしれない。とまぁそんな話はともかく。この作品はそんなeスポーツに関するお話なのである。

 

eスポーツの選手であった父親を持つも、その父の没落と離婚で離ればなれになり、その後は優等生として生きていたOL、結衣(表紙左)。しかし所属する、とある企業の研究部系の部署で起きた同僚の不正を庇い左遷され、その左遷先の部署で講演会へと駆り出され。その中で出会ったのは著名ベンチャー企業の創業者、四条。彼女に興味を抱いた彼により勧誘されたのは、新たに生み出されるeスポーツチームの全てを管理するマネージャーの仕事。

 

「私、みんなと一緒に何かをやるとあまりうまくいかないんだ」

 

挑んでいく舞台は世界で一番プレイされている、銃と各キャラクター固有スキルを組み合わせ戦う五対五のFPS、「ヴェインストライク」。トッププレイヤー、異名を「魔王」と呼ばれる妹、凛を勧誘したら芯を突かれて思わず啖呵を切って。結衣が集めたプレイヤーの中、その中に「魔王」に並びうる原石が一つ。その名はPN、「リン」。(表紙右) 田舎出身の不登校女子であり、プレイヤー歴一年ながらトップ層とも渡り合う地力を持つ、正にダイヤの原石。

 

「結衣さんがコーチやってみればいいんじゃない?」

 

更に、コーチが心の病でいなくなり、リンの何気ない一言から結衣がコーチをやってみる事となり。膨大な情報収集からの的確な分析、という今目覚める力が牙を剥き。チームは本格的に指導し軌道に乗っていく中で。凛が所属するチーム、「キングダム」と激突し、ぎりぎりまで食い下がり。結衣たちのチームは、やにわに有名になっていく。

 

だがしかし、有名になると言う事は注目を集めると言う事。即ちどうなるのか、今のSNS時代では。 凛達との対談、その中で結衣と凛の過去が掘り出され。更にはリンも「キングダム」のコーチ、ユウキとのコラボの中で自らの内面を指摘され、更には過去の意図せぬ行いで炎上し、チームを離れ。 だんだん苦くなっていく状況の中で届いたのは「キングダム」との提携の話。

 

「なので、私は新しく会社を作ることにします」

 

さぁどうするのか。確かにチャンス、だけどチームの仲間達にとっては、そうとも言い切れぬ。こだわるべきは何か。凛との対話の中で心の中を打ち明け合った結衣は決意する、己の足で歩き出す事を。 新たに彼女の元で作られるチーム、「レイナス」。

 

「ごめん、私、遅くなって」

 

離れていたリンも、結衣と凛からのメッセージを受け取り、戻ってきて。再びチームとして指導し、世界の舞台をかけて日本国内の予選へ。

 

「結衣さんの願いごと、全部かなうよ」

 

「うん、任せた」

 

立ち塞がるのはかつての上司、そして「キングダム」。対するこちらは限界チーム、期待されても悪役がせいぜい。だけどそれでも、立ち向かう。皆で進むために。先を征く「魔王」へと、共に歩んで作った約束を叩き込む為に。その結果は是非皆様の目で。

 

eスポーツの熱さ溢れるこの作品。 熱いゲームものを見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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