読書感想:はばたけ魔術世界の師弟たち!

 

 さて、アニメやラノベにおける師弟と聞いて画面の前の読者の皆様はどのコンビを連想されるであろうか。連想する対象によって趣味や世代が見えてくるかもしれない。個人的には流派東方不敗の師弟や黒魔術の師弟を連想してしまう訳であるがそれはともかく。教える立場になると見えてくるものがあるのも確かかもしれぬ。今まで自分の中に合ったものを言語化して後進に伝えていく、それもまた一つの成長と言えるのかもしれぬ。

 

 

そう、成長、である。師匠により弟子は成長するものであり、弟子もまた師匠を成長させるものである。これはそんな、師弟のお話なのである。

 

魔族や魔物、魔法が存在するとある異世界。その魔界と人間界の中間に位置する魔導都市、ヴィノス。かの年を作り上げ支配する大魔導師、イシュタル。しかし彼女はもう齢80を超えるおばあ様であり、引退を決めようとしていた。

 

「弟子の俺らの寿命が尽きても暴れ回ってそうなクセに」

 

そんな彼女は十人の弟子、高弟の中から後継者を決めようとしていた。その1人である孤児出身の肯定、ジルベルト(表紙左下)。かつては精力的に活動していたものの今は、ご主人様大好き毒舌メイドのアルト(表紙左上)に揶揄われたり毒舌を吐かれたりしながら表舞台から引き自堕落に過ごす日々。ある日、彼の元へイシュタルが連れてきたのは、剣術の名門の貴族家が魔術方面を伸ばすために養子とした少女、ラピス(表紙中央)。 イシュタルの方は婚約させようかと思ったものの、ラピスは弟子にしてほしいと言い。結果としてジルベルトに一発攻撃を当てられたら、という条件になる。

 

「泣くくらい悔しかったら、死ぬほど鍛えて強くなれよ」

 

魔術方面はまだまだ未熟、そして剣術の名門、というより騎士の家系だからか直線勝負の直球勝負。当然攻撃を当てられず、アルトの入れ知恵で嫌がらせの方向が強くなっていったり。それでも彼女は諦めぬ、理由がある。それはかつて難病から彼に救われたから。その難病の薬を作る過程でジルベルトは負傷してしまい、その辺りの記憶はない。それでも、と真っ直ぐに思い師匠の悪口を言った相手をぶちのめす事が出来ず無力に涙を流し。そんな彼女にどこかぶっきらぼうに励ましの言葉を与え、ラピスはアルトに教えられ努力し。切り札を絞った一撃と、アルトの奇策な罠も用いて一撃叩き込み、弟子の座を手に入れる。

 

「本気で大魔導師の後継者を目指してください」

 

その裏で交わしていたアルトとの賭け。勝った彼女から求められたのは本気になる事、求める事。約束を破ったことはないからこそ、その願いをかなえるために。ラピスの指導に力を入れつつ、ジルベルトも前を向き、師匠に勝つための方法を探し始める。

 

「あいつらと約束したんだよ。俺がテメェを倒して、最強の魔術師になるってな」

 

変わっていく、弟子の真っ直ぐな熱さに影響されて。弟子達との約束、そして師匠との約束を果たすために。師匠に突き付ける宣戦布告、切り札として弟子たちの力を借りて。合格を引き出す一撃を叩きつけて見せるのである。

 

弟子と師匠が互いに成長させ合う、そんな成長ものの熱さに満ちたこの作品。少年漫画的な熱さを見てみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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