読書感想:君の足のためなら死ねる

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 さて、画面の前の読者の皆様はサッカーの試合というものをご覧になられたことはあられるであろうか。もし、ご覧になられたという読者様は、どんな選手でも構わないが、圧倒的に魅力的、もしくは美しいプレーに目を奪われたことはあられるであろうか。まるで芸術的、そう言わんばかりのプレーに一種の感動を覚えられたことはあるであろうか。

 

 

そんな「美しさ」というものを凝縮したのがフットサル。究極のスポーツエンターテイメント。そんな美しさをどこまでも魅せていく競技を、もし今からその美しさが開花していく少女達がプレーするとしたら、それは更なる美しさを持つとは思われないだろうか。

 

 そんな競技にコーチとして挑む少年が今、一人いた。彼の名は行真。かつて日本の至高と言われるほどの天才的なサッカーの素養を持ちながらも、酷い怪我によって選手生命を断たれた燃え尽きた燃え殻のような少年である。彼は今、一人の少女と出会う。彼女の名はユイ(表紙)。行真が「天使の翼」と見紛う程に美しい脚をした、コミュ障な少女である。

 

母親である絶火により集められた五人の少女達。彼女達はそれぞれ、確かな才能を持った少女である。だがしかし、彼女達は優等生などでは決してない。寧ろ彼女達は問題児。全員が全員まともに学校にも通えていない問題児。そんな彼女達がフットサルをやるという事はどういう事か。それこそは確実に金になる、最高のエンターテイメント。

 

 そんな少女達のコーチとして行真は就任し、あまりの脚フェチぶりにドン引きされたり警戒されたりしながらも、彼女達の指導に励んでいく事になる。

 

それぞれにクセと傷を抱えた少女達との共同生活、そして彼女達の輝きに真正面から向き合う指導者としての生活。

 

時に少女達同士がぶつかり合い、時に彼女達の心の傷に向き合い、彼女達も知らなかった彼女たち自身の才能を見出し。

 

少しずつ纏まり、形となりながら。唐突に持ち上がったユイの退団の危機に全員で立ち向かっていく。

 

「娯楽なら勝敗関係なく楽しめばいい。けど戦いなら―――絶対負けられないってな」

 

 そして彼女は試合と言う名の「戦い」の中で気付く、本当に大切な事に。それこそが彼女の視界を広げる鍵となり、一歩踏み出す翼の背を押す追い風となる。

 

 

時にぶつかり合い絆を深め、そして皆で踏み出していく。正にスポ根、その王道の熱さと面白さが溢れているこの作品。

 

スポ根ものの熱さが好きな読者様、丁寧な展開が好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。