読書感想:三傑のサッカーは世界を揺らす!

 

 さて、サッカーに関する作品と言えば、イナズマイレブンやら古くはキャプテン翼等様々な作品がある訳であるが。そも、サッカーに限らずラノベでスポーツものがそんなに存在しない気がするのは何故なのだろうか。やはり、スポーツ、ひいてはスポ根ものに特有のものである熱さを、文章でしか書けぬラノベ、というのは熱さを出すのは中々大変、というのがあるのだろうか。

 

 

という前置きはともかく、この作品は珍しい、かもしれぬスポ根ものであり、サッカーという競技の熱さをこれでもかと書いている作品である。正直なところを告白すると私、この作品に最初は注目しておらずとある配信で読んでいないと告白したら、読んでくださいと読友さんに囲まれたので読むことにしたわけであるが。正直、私の審書眼もまだまだだな、と反省したくらいにはこの作品は面白かった、という事を話しておきたい。

 

後に、日本の人達にサッカーで日本が一番強かった時代は、と聞いたら口をそろえて「三傑」と呼ばれていた者達が揃っていた時代、と答えられるようになる時代。義丸、明(表紙)、槍也という三人のエース選手が揃っていた時代。その時代は彼等が十五歳、中学三年生の時から始まった。

 

 

「なあ、俺とサッカーをやらないか!?」

 

中学三年生、同じ学校であった槍也と明。この時代から既に日本中から活躍を期待される選手であり、設備の整った東京への進学が決まっていた槍也とは違い、明は音楽が少し好きなだけの、かつてサッカーを経験するも周囲と合わせられず辞めた、という経歴を持つだけの普通の少年。そんな明には誰にも言えぬ秘密があった。

 

それは「山彦」と名付けた謎の声に、聴覚だけを共有される形で身体に間借りされていると言う事。とりあえず共存するある日、球技大会。山彦の全体を把握した指示に従い、主にパスワークでチームを勝たせ、勢いのままに槍也のいるチームにも勝ってしまい。彼からの熱烈な勧誘を受ける事となる。

 

 

無論、それで乗る明でもなく。まだこの時点では熱が燃え尽きているから、何度お願いされてもすげなく切り捨て。しかし槍也の妹でもある琴音にも絡まれ、お願いされた事で。休日、槍也の仲間達とサッカーの試合を行う事となる。

 

その最中、噛み合っていく。これまで誰とも合わせられなかった明と、誰もついて来れなかった槍也。二人の化け物、天才の個性が噛み合っていく。槍也にとって足りなかったもの、唯一無二の存在が埋まっていく。

 

「俺はさ・・・・・・きっと、あいつに惚れちゃったんだよ。もう、他の事が考えられない・・・・・・ぐらいにさ」

 

それは、まるで一目ぼれのよう。二度と離したくない、自分とサッカーをしてほしい。惚れ込んだ槍也は一つ、大事な決断を下す。彼と同じ高校への進学、彼がサッカーをまたやるかも分からぬのに、という前提の無謀な賭けを。

 

だが忘れてはいけぬ。まだ、この作品は序章も序章、伝説の始まりに過ぎぬと。そもそも三傑の残る1人が、出会う時を待っているという事を。

 

スポーツの熱さがこれでもかと込められた、熱い面白さあふれるこの作品。心に熱を灯したい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: 三傑のサッカーは世界を揺らす! (ファミ通文庫) : カロリーゼロ, 八三: 本